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破線サークル
フラワーアレンジメント1

​ 世界を駆ける

   

番外編*拍手小話~ミニスカサンタの誘惑+a編~

*過去の拍手お礼SS集

 目前にあるのは扉。
 いつもなら簡単にノック出来るのに、今日は躊躇ってしまう。その動悸は旦那達の愛ある囁きよりも速い。だが、意を決してノックをすると、返事を待たず扉を開いた。

 

「メリークリスマース!」
「ヒナ……タ!?」

 

 開いた先には日射しを背に受けながら書類を片す、フィーラ。
 だが、その赤の瞳は大きく見開かれていた。恐らく私の格好が問題なのだろう。

 

 赤のベアトップになったワンピースは膝上ミニで、裾にはふんわりとした白の綿。
 胸元はクロスさせた黒のリボンで結ばれているが、くっきりと谷間が見える。足元も赤のブーツに白の綿が添えられ、首元にはフード付きマント。いわゆるサンタコスだ。
 口を開いたまま固まるフィーラに構わず、足を進めた私は箱を差し出す。

 

「ほ、ほら、プレゼント。こっちはアサヒので……イ、イズから『六帝会議』開催の報せも受け取ってきた」
「あ、ああ……その時期か。そ、それよりその格好は……」

 

 プレゼントと紙を受け取ったフィーラは目を彷徨わせる。腕を組んだ私も頬を赤くするが、そっぽを向いた。

「ク、クリスマスだからな……ちょっとしたサービスだ」
「サービスって……あまりその格好で動き回るな」
「な、なぜだ?」

 指摘にピクリと肩が跳ねると、溜め息をついたフィーラは受け取った物を置き、立ち上がる。つい数歩下がってしまうが、腕を掴まれると同時に優しく抱きしめられた。背に回る腕は温かく、頬に口付けが落ちると囁かれる。

 

「誘惑されるのは俺だけでいいからだ」

 

 甘い声と共に顎を持ち上げられると唇が重なる。
 それだけでも全身が熱くなり、気付けば肩に彼のマントを羽織らされていた。唇を離したフィーラは微笑む。

 

「取らないでくれよ?」
「……っ!」

 

 柔らかな微笑は射し込む光よりも暖かく神々しく、マントを握った私はただ頷くしかなかった。

 


* * *

 


 城に戻ってきた私は全身が熱い。
 騎舎から小走りしてきたせいもあるが、未だに耳元でフィーラが囁いているような気がしてならない。股も疼いているが、ホールで安堵の息をついた。

 

「危なかったが、やはりフィーラは気付かなかったな……しかしこれは想像以上に難しいミッションだ」
「どんなミッションですか?」
「ひっ!」

 

 独り言に返ってきた声に、背筋が真っ直ぐになる。肩を震わせながら振り向けば、白のフードを脱ぎ、微笑を向ける旦那。

「ベベベベベベルっ! ななななぜ貴様が!?」

 結婚しても滅多に書庫から出てこない男の登場に驚きを通り越して発狂する。柱にしがみつくほど。それが不自然だったのか、ベルは小首を傾げた。

 

「オーガットに用があって……そんなに驚くことですかね?」
「いや、あ、と、突然だったもので……!」

 

 しどろもどろになりながら柱から離れると手を握られる。
 ゆっくりと顔を寄せる彼の白銀の髪からは解けた雪の雫が落ち、私の頬を濡らした。翡翠の双眸は柔らかい。

 

「何を隠してらっしゃるんですか?」
「な、何が……?」
「いえ、可愛らしいサンタさんが何やらもじもじしてらっしゃるので」

 

 くすりと笑ったベルは腰に手を回し、顔を近付けると口付ける。
 フィーラとは違いすぐ舌を挿し込まれ、息を荒げていると唾液が下唇から零れた。唇を離した彼の舌に舐め取られる。

「んっ……ベル」
「とても色っぽい顔をされてますよ……こちらも」

 

 頬を赤くした私に微笑んだベルは、腰に回していた手を下ろす。その瞬間覚醒し、勢いよく彼の股のモノを握った。

 

「っ!!!」
「メリークリスマース!!!」

 

 混乱状態でも祝いを述べると、ベルは身を屈める。その隙に彼へのプレゼントを置いた私は一目散に逃げた──すまん、ベル。

 


* * *

 


 息を切らしながら『宝遊郭』に辿り着くと、バタバタと五階まで上がり、大きく襖を開けた。ローソファに腰を落とし、一服していたチェリーさんが瞬きする。

 

「ヒナ嬢? どうされま「スティ、いますか!?」

 

 遮った私は最後まで聞くことなく足を進める。
 驚きながらも咎めることなく頷いたチェリーさんに礼を言うと、連なったカーテンの奥にある襖を開いた。変わらずニメートルほどに積み上げられたクッションの山に迎えられ、中腹辺りには両手が飛び出している。

 

「メリークリスマース!!!」
「っ!!?」

 

 勢いよく跳びつくと、クッションが雪崩を起こす。突然の事態に寝ていた旦那スティもさすがに目覚め、慌てた様子で辺りを見渡した。

 

「な、何? 何?」
「スティ、プレゼント」
「ヒ、ヒナさん!?」

 

 埋まっていた私と目が合ったスティの髪は左右に跳ね、上半身裸。
 プレゼントを差し出す私にまだ事態が呑み込めてないようだが、起き上がった私は背中を向けた。

 

「じゃあな」
「え、ちょ、待っ……!」

 

 急ぎ、手を伸ばしたスティだったが、自身の着物を踏んでしまい、転倒と同時に私の片脚にしがみつく。クッションという不安定な足場に私も体勢を崩し、一緒に転けてしまった。

 

「った~……あ」

 

 幸い柔らかいクッションのおかげで衝撃はさほどなかったが、起き上がった私は目を見開く。スカートの中に頭を突っ込んだスティに。
 沈黙が続いていると、そろりと顔を出したスティが頬を赤くしたまま呟いた。

 

「ヒ、ヒナさん……なんで「スティのバカああああーーーーっっ!!!」

 

 彼に対して今までにないほどの悲鳴とハリセンをお見舞いした──。


 

* * *

 


「な、なんかあったのか……?」

 

 顔を真っ赤にしたまま身体を震わせる私に、旦那アウィンは控えめに訊ねる。だが首を横に振り、プレゼントを差し出した。

 

「メリー……クリスマス」
「お、おう、サンキュ」
「じゃ……」
「あ、待てよ!」

 

 すぐさま背を向けると、手を握られる。
 振り向けば、渡したのとは違うラッピングが施された箱を差し出された。瞬きする私に、アウィンは照れくさそうに言う。

 

「おめーの分のプレゼントだよ……メリークリスマス」
「アウィン……!」

 

 不器用な微笑に胸が高鳴ると、我慢しきれず抱きしめる。
 当然恥ずかしがり屋の彼は慌てるが、観念したように一息つくと頭を撫でてくれた。その手に顔を上げれば優しい口付けが落ちる。と。

 

「おい、破廉恥女!」
「げっ、テット兄!」

 

 地を這う声に唇を離したアウィンは顔を青褪める。さすがに役所でイチャイチャはマズかったのか、佇む義兄こと手羽先は不機嫌そうに私達を睨んだ。

 

「いかがわしい格好でここに来るな!」
「い、いかがわしいとは失礼な! 普通だろ!!」

 

 反論する私をアウィンは止めるが、腕を組んだ手羽先は鼻で笑った。

 

「ふん、どうだか。どうせ貴様のことだ、恐らくノ「言うなああああぁぁーーーーっっ!!!」

 

 異世界にやってきて十年。はじめて手羽先をハリセンで叩いた記念日になった。

 


* * *

 


「やあ~ヒーちゃん~エロい~格好~してるね~~」
「やかましい。ほれ、受け取れーーーーっっ!!!」

 

 宰相室に入ると、ピッチャー第一球投げましたというようにプレゼントを投げる。
 残念ながら旦那、バロンの席までは届かなかったが、律儀に立ち上がった彼は拾い上げた。いつもなら『拾って』とか命令するせいか珍しくて瞬きする。と、金色の双眸を向けられた。

 

「ねえ、ヒナタちゃん」
「っ!!!」

 

 語尾を伸ばしていない呼び声に、産毛が逆立つような思いだ。
 これはマズいと退室しようとするが、細められた瞳に捉われたかのように動けなくなる。一歩一歩と歩み寄るバロンはくすくすと笑う。

 

「ねえ、もう一回、今のしてくれないかな」
「い、今のって……?」
「投げた時のポーズ」

 

 ピッチャーの真似をしたのが仇となったのか、背筋に悪寒が走ると目先でバロンが立ち止まる。伸ばされた彼の手が、肌を見せる脚を撫でた。

「っ……!」
「あれ~なんだろね~これ~~」

 

のんびりな声に戻ったバロンは指先で何かを拭うと私に見せる。それはトロリとした、透明な蜜。

「ひやああぁぁぁーーーーっっ!!!」

 

 一瞬で顔を真っ赤にさせると、火事場の馬鹿力でも発揮するかのように、バロンを跳ね除け、宰相室を後にした。


 

* * *

 


 元・自室へとやってきた私はベッドに雪崩れ込む。
 熱くなった身体はいっそうに疼き、股に手を入れた。くちゅりと音が鳴る。

 

『や~ん、いっやらしい音~』
「っ……!」

 

 息を呑むと、窓から射し込む光の影が浮く。
 それは徐々に人の形を取り、赤の瞳に漆黒の髪を揺らす旦那、イズが現れた。口元に弧を描いた男は股に入れていた私の手を取る。指先についているのは愛液。

 

「あーあ、会うだけでこんなぐちょぐちょに濡らして……ヒナって本当俺らのこと好きだな」
「う、うるさい……あ」

 ベッドに座ったイズは、くすくす笑いながら指についた愛液を舐める。
 くすぐったさとピチャピチャ舐める卑猥な音に身じろぐが、胸元のリボンを解かれると、スカートもたくし上げられた。ブラをしていない乳房と、ショーツを穿いていない愛液を零す秘部が丸見えになる。

 

「エッロ……」
「だ、誰のせい……ひゃっ!」
「ヒナが負けたせいなりよ」

 

 愉しそうに笑いながら片方の手が乳房を揉み、片方の手が秘部を撫でる。
 そう、今日一日中私はこの格好でノーブラノーパンだった。プレゼント渡しの時にイズと出会い『四聖宝トランプ』という旦那達を動物化した非売品トランプで賭けをし敗北。歳も考えない格好で罰ゲームとしてノーブラノーパン……もう穴があったら入りたいほどの羞恥だ。

 

「ウズウズしながらヤツらと会ってる時のヒナはエロかったぜ……今にも蜜を零しそうでよ、尖った乳首からはミルクまで」
「い、言うなあ……!」

 

 両手で顔を覆う私に構わず、イズは胸の先端を摘みミルクを、挿し込んだ指を速めて愛液を零される。旦那達に触れられる度に増す快楽。ダメだとわかっていても疼きは止められず、既に息を上げる私は願った。

「ああ……もうダメだ……もっと」
「もっと……何?」
「もっと……ああもっと……シてっ!」

 

 高鳴る動悸と快楽に押し負け、懇願した──瞬間。

「いいぞ」
「いいですよ」
「いいよ」
「いいぜ」
「いいよ~」
「いいなりよ☆」
「え……」

 イズ以外の声に快楽は遠くなり、瞬きする。同時に窓から、ドアから、影から姿を現す──五人の旦那。
 突然の登場にフィーラのマントで身体を隠すが、窓から入ってきたフィーラとベルによって奪われる。

 

「取るなと言っただろ?」
「まさかノーブラばかりかノーパンだったとは……」
「テット兄が変態に見えてきた」
「普通~気付くでしょ~~」

 

 ドアから入ってきたアウィンとバロンは私の両足を広げる。
 だらだらと零れる愛液が恥ずかしくて腰を捻られるが、二本のナイフがくびれの傍に刺さる。影から姿を現したスティは不敵な笑みを浮かべた。

 

「動いたらダーメ……」

 

 未だかつてない冷笑に、叩いたことを怒っているのがわかった。震えだす私に、愉しそうに笑うイズは口付け、艶やかに囁く。

「んじゃま、ヒナ。もう一回言ってもらおうか」
「へ……?」

 

目を丸くすると、囲う男達が旦那達が一斉に笑みを浮かべた。

 


『何をシてもらいたいって?』

 


 甘美な声と欲情を宿した瞳。それらに敵うはずはなく、ただ疼く身体のように素直な言葉で気持ちでねだった。聖夜だからこそその願いは強く、果てるまで愛し愛される一日と化す。

 


ちなみに……。

『ああ、影から見上げたら、のーぱんなのがまるみえであったぞ。相も変わらず愉快な輝石だな』
「いやああああーーーーーっっ!!!」

 

 魔王にもバレバレであった────。

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