異世界を駆ける
姉御
番外編*拍手小話~節分編~
*過去の拍手お礼SS集
*節分*
今日は節分の日。邪を祓うためにも豆まきをせねばならない。
よっし、育児も落ち着いたし、私が鬼役をしよう! 旦那達も鬱憤が溜まってるだろうしな!! 行くぞー!!!
*アズフィロラ編*
「ガォーー!」
鬼の面をした私にフィーラとアサヒは沈黙。ついでに冷たい目で見ている。
それにムっとした私はアサヒをガバリと抱きしめた。
「わあ!」
「ふっははは、捕まえたぞ!さあ、返してほしくば剣を捨てろ!!」
「キミは何がしたいんだ」
「うるさい! 節分だから許される!! さあ、どうするフィー……!!?」
完全に悪者台詞を吐く私にフィーラは大きな溜め息をつく。だが一瞬で私との間合い詰め、大きな両手で私とアサヒを包むと、床に勢いよく倒れ込んだ。当然フィーラが下で、怪我も大きな衝撃もない。
一瞬の出来事に瞬きする私のお面を取ったフィーラは、私の口に何かを入れた。ガリガリとした歯応えは豆。
「悪い鬼には豆、だろ?」
「食べさせるのは……もぐ……違うだろ……んっ」
文句を言いながら食べていると口付けられる。舌がチロチロと口内を巡り、身じろぐ。薄く開いた先には意地の悪い笑みを浮かべるフィーラ。
「なら……降参の声を上げるまで……しようか」
「あ、ん……フィーラ」
塞ぐ唇と、秘部を突く意地悪な赤鬼の手に捕まった私は喘ぐ。
胸元にアサヒがいるのも忘れて────。
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*ラガーベルッカ編*
「ガォーー!」
「わ~おにだ~」
「鬼は~外です~」
「福は~うち~……」
鬼の面をした私にルルとキョウカは楽しそうに豆を投げ、セツは本を読みながら投げる。だが、そこに旦那の姿がなく、面を取った私は小首を傾げた。
「ベルはどうした?」
「はい、なんでしょう」
突然耳元で聞こえた声に大きく身体が跳ねると、後ろからガバリと抱きしめられる。ふわりと魔法ではなく腕力だけで浮かせることが出来るのは一人。だが、振り向いたらいつものがくると動きを止めていると、耳元で囁かれた。
「捕まったというのに往生際が悪い鬼さんですね」
「んあっ……うるさ……いん」
くすくすと耳元で笑われるだけで刺激が全身を駆け巡る。だが振り向かないぞと、必死に我慢していると、子供達の容赦ない豆攻撃がきた。
「こここらー! 私は今、面をしてないぞ!!」
「「「だってパパがしてる」」」
「え……ぎゃあっ!?」
三人の声に振り向くと般若面のドアップ。予想外のことに悲鳴を上げると、面が外され、いつもの爽やか笑顔を向けるベルの顔が現れる。
「そんなに驚かなくて……おや?」
いつもの笑顔に安堵したように両手を首に回すと抱きしめる。
「ああ……やっぱりベルは……この顔だな……癒される……あんっ」
「ありがとうございます。私もヒナタさんの喘ぐ可愛い声と顔が大好きですよ」
口付けを何度も受けながら、大きな手が背中やくびれを押し、刺激と安らぎを与えていく。後ろでボリボリ豆を食べる三人の子供達に構わず────。
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*カレスティージ編*
「ガォーー!」
「わーわるものだー!」
鬼の面をした私にスズナは大喜びするように両手を挙げると、豆ではなく青ウサギを投げる。え、ちょ、スズナくん、それは違うぞ!!!
ツッコミをしながら大慌する私に向かって勢いよく飛んでくる青ウサギ。これは避けられない!
だが、青髪と空色の着物を揺らすスティが私の影から現れると、青ウサギを手で弾き飛ばした。ぽすりと落ちた青ウサギに私とスズナは目をパチクリするが、目を細めたスティはスズナを睨む。
「何……してんの……スズ」
「おにたいじー!」
「鬼退治でもなんでも……ヒナさんを傷つけるのは許さない」
「ス、スティ……行事ぐらいいいだろ。ほら、スティも投げろ」
子供相手でも殺気を出すスティに、私は豆を渡す。しかし、振り向いたスティは眉を落とすと私を抱きしめた。
「ダメですダメです! ヒナさんに豆を当てるなんてボクには出来ません!! 壊してしまいます!!!」
「おいおい、大袈裟だな。私はそんなヤワではないぞ」
「……本当に?」
「うむうむ、私は丈夫だ……あっ」
頷いていた私だったが、両手を捕まれると床に押し倒された。跨いだスティは少し意地の悪い笑みを向けながら私の服を脱がしていく。
「ス、スティ……くん?」
「丈夫……なら……何度イかせても……いいですよね?」
「ちょ、待っ──!!!」
不適な笑みと共に落ちた口付けと、身体に与えられる刺激に成す術はない。スズナとナズナに凝視されていても────。
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*エジェアウィン編*
「ガォーー!」
「きやがったな、鬼!」
「鬼たいじだ~!」
鬼の面をした私にアウィンとアンナは豆を投げ、私は抵抗するようにハリセンで防御した。当然怒られる。
「おい、ずりぃーぞ!!!」
「むっははは、ヒーロー相手に素手なわけがなかろう!」
「いいやがったな! 行くぞ、アンナ!!」
「おう!」
二人は私を挟むように二手に分かれると勢いよく豆を投げる。片方を防げても、片方は当たり、さすがに音を上げた。
「あーもう! 降参だ降参!! 痛い痛い!!!」
「「よっしゃあ!!!」」
降参の手を挙げる私に二人はハイタッチをし、捕まえるように抱きしめる。
「さてと、捕まえた鬼はどうすっかな」
「くっ、煮るなり焼くなり、好きにするがいい」
「おめー、あんまそういうことは言うもんじゃねーぞ」
「は……あん!」
瞬きすると、頬ずりしていたアウィンは耳朶を舐め、首筋を吸う。
「いや……これは……っあ」
「捕まえたら、言う事は聞くもんだぜ?」
「ヒ、ヒーローがすることじゃないだっああっ!」
ヒーローには程遠い悪の笑みに、捕らわれた鬼は言うことを聞くしかない。
子分、アンナにくびれを突かれながら────。
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*ヒューゲバロン編*
「ガォーー!」
「「鬼はー外ー、福はー内ー!」」
「いっただだだだ!!!」
鬼の面をした私にバロンとヒュウガは容赦なく豆を投げる。それはもう痛いってもんじゃないほどの本気だ。
「き、貴様らっあ!!!」
「はい~鬼さ~ん~捕まえた~~」
「掃除をしましょう」
アッサリ逮捕されてしまった。
ヒュウガは早々に豆の掃除をはじめ、私を後ろ手に捕まえたバロンはニコニコしながらお面を外す。
「あれ~予想以上に可愛い子が鬼だったんだね。これは鬼が福に化けたのかな?」
「芝居はやめろ。まったく」
「なりきるのも大事だよ……ね」
「あっ」
椅子に座ったバロンの膝に乗せられると、股間にあるもので秘部を擦られる。両手はまだ捕らわれたままで、身動きが取れない。それをいいことに、バロンはうなじや首筋を舐める。
「んっ……あん」
「ん……あれ……腰を動かして……刺激が欲しい……Mな鬼さんだったのかな?」
「バカ……っあ」
「ほら……欲しいなら自分でもっと動きなよ」
官能な声は誘惑するように囁き、私の身体をどこまでも気持ちよくさせた。目の前に四十五粒の豆を置くヒュウガを放って────。
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*イヴァレリズ編*
「ガォーー!」
「「鬼はー外ーー、福はーー!」」
「おっぱい~~!!!」
「却下ーーーーっっ!!!」
ナツキとイヅキの豆は甘んじて受けていたが、飛び出してきた黒い物体には容赦なくハリセンホームラン。壁に激突し、落ちる音が響く。鬼に金棒ではなく、鬼にハリセンだ。
仮面を外すと、イズがゆっくりと起き上がった。
「くっそ~、手ごわい鬼だぜ……」
「ほう、まだくっ!?」
ニヤリと口元に笑みを浮かべたイズは影を使い私を捕らえる。
「ちょ、これは卑怯だろ!」
「なんでもありだぜ。悪いヤツを捕まえるんだからな。さーて、どうしてやるなりかね~」
「悪い顔をする……っあ!」
ニヤニヤする男は人差し指で胸の先端をツンと突く。それはまるでインターホンを鳴らすように押し、離すと今度はグリグリと回す。
「ああんっ……あ」
「すっげぇツンツンしてんな。下はどうかな」
「あっ待っ……ん!」
胸の先端を押しながら、下腹部に手が伸びると、秘部をツンツンと突かれる。怪しい笑みは、仕返しをするようにねちっこく私の身体に刻んでいく。
ナツキとイヅキが互いに豆を投げ合い、床を散らかそうとも────。
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*魔王編*
「ガォーー!」
『……相もかわらず、愉快なことをしておるな』
鬼の面をした私に、たまたまやってきた魔王はどこか冷めた顔。
だが、ヘビは『シャ~シャ~!』と何やら喜んでいるようにも見える。そんなヘビの頭を撫でていると面を奪われた。
『で、なんの遊戯をしておるのだ?』
「節分だ」
『せつぶん?』
見ていた面から顔を上げた魔王は片眉を上げる。しかし要約すると、くすくす笑いはじめた。
『魔物である我に鬼(主)退治をしろと? それはまた矛盾した話だな』
「だって貴様は邪気から生まれたようなもんだろ?」
『はっきりいいおったな。だからこそ、我が面を被っ!』
言い終える前に面を奪った私は豆袋を渡す。そのまま距離を取ると面を被り、両手を上げた。
「魔物(きさま)にとっては私達が憎むべき邪気(てき)なのだから、間違ってはないさ。さあ、こい!」
元気よく言ったが、面に開けられた小さな穴から見える先には目を丸くする魔王とヘビ。
だがすぐに肩を揺らしながら喉を鳴らされる。何か違っただろうかと小首を傾げるが、気付けば宙に浮いた魔王が目先にいた。面で視界が狭まっていたとはいえ、さすがに驚いていると面を奪われる。
『勘違いしておるようだが、我にとっての邪気(てき)は魔力をもつこの世界のモノで、輝石の主ではない』
「あ……」
『よって、ヤツらで鬱憤を祓い、主の嬌声をきこうとおもう……苛められる主の声をな』
「は……んっ!?」
目を丸くすると同時に口付けられる。
それはすぐに離れ、面を被った男は口元に弧を描いたまま影へと還って行った。静寂が包む中、私はただ首を傾げる。
その日、旦那達が豆に襲撃される事件が発生した。
影から現れたことから当初イズが疑われたが、自身も襲われたことを訴える男に全員が沈黙。そこに、ポトリと鬼の面が落ちてきた。その面を今日“誰”が被っていたか。そして“もう一人”の影の住人の存在で察したのか、旦那達の笑顔が私に向け……──え?
子供達が寝静まった夜。
秘密の場所で根掘り葉掘り聞かれ吐かされの私の悲鳴と矯声に、どこからか愉しそうに笑う声が聞こえた────。