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番外編*11月19日*総一郎誕生日

*総一郎視点

『~~♪』
「またか……」

 

 紫煙と一緒に溜め息を吐くと携帯を取る。
 自宅マンションで一人パソコンを弄っていると、0時を過ぎてからやたらと携帯どころかパソコンの着信音が鳴り続いていた。その殆どは仕事とは関係ない知り合いで、全員が『誕生日おめでとう』のメッセージ。

 

「暇人しかいねぇのか……」

 

 自分の誕生日も他人の誕生日も覚えてないせいか、覚えているヤツを尊敬する。が、すぐ眉間に皺を寄せると、スタンプだけ返して消音にした。

 

 明日という名の今日が面倒なことになりそうな予感がするからだ。

 


* * *

 


「ご機嫌よう、総一郎。そして、誕生日おめでとっだ!」

 

 予感は的中。
 出社して早々、腹の立つ笑顔で社長(俺)の椅子に座る悪友其の一、櫻木 隆成の頭にチョップを入れた。百歩譲ってサボりは良いとして、問題は抱えている物体。

 

「てめぇ、会社に猫つれてくんじゃねぇって何度いわせる」
「一緒に誕生日を祝おうと思ってね」
「むっちゃ嫌がってんぞ」

 

 煙草に火を点けると、隆成に抱えられている子猫二匹が暴れる。 
 いつもの癒され衝動で飼いはじめたらしいが会社にまで連れてきて迷惑だ。が、そんなの気にもしない隆成は席を立つと、ソファに移る。

 

「十九時にレストラン予約してるから仕事終わらせてね」
「てめぇにだけは言われたくねぇし、俺の予定も聞かず勝手に入れんな」
「ちゃんと角脇くんに確認したよ」

 

 『ねえ?』と、笑顔で振り向く隆成に、猫の毛がついた椅子を柳田とコロコロで取っていた角脇は無表情で頷いた。

 

「はい。総一郎様が死ぬ気で頑張れば間に合う時間帯です」
「揃ってケンカ売ってんだな?」
「その怒りを仕事にぶつければ大体出来ると、寺置さんが言ってました」
「あんのっ腹黒秘書!!!」
「っだ! 総一郎、八つ当たりはやめっだだだ」

 

 近くの頭にチョップをかますが『ふふふ』と笑う嫌な男が浮かび、隆成の頭を回す。だが、手の平とフィットせず苛立ちが増していると、猫二匹が跳びついてきた。

 

「ああ? 離れろ千風」
「千(せん)ちゃんと風(かぜ)ちゃんだよ……て言うか、名前主同様、総一郎に懐くなんて妬けちゃうなぁ」

 煙草を灰皿に潰していると、隆成が恨めしそうな目を向ける。
 俺もまた肩に乗った二匹を見つめると、能天気と不愛想。対称的な表情をする二匹に“二人”が浮かび、指先で二匹の頭をぐりぐり回した。文句を言いながらも指に擦り付く仕草に喉を鳴らす。

 

「くくっ、苛めたくはなるが、あの二人ほど興味湧かねぇな」
「もう苛めてるじゃないか」
「うっせーよ。ところで夜は他の連中も呼んでんのか?」

 

 二匹を持ち上げると、柳田が持ってきたキャリーに入れる。
 一息吐いた隆成は携帯を確認した。

 

「まだ既読になってないけど来ると思うよ」
「まあ、てめぇが招集かけたなら来るだろ。ついでに圭太のおごりだろ?」
「正解。なんなら、食事後に『蓮華』行く?」

 

 提案に振り向く。隆成は意地悪く笑っているが、目の端に二匹を映すと同じ笑みを返した。

 

「てめぇと圭太と龍介が払うなら喜んで行ってやる」
「…………はあ。やだねー、俺様の誕生日は」

 

 誕生日に行ったら最悪四桁の金が出かけない店。
 そこに君臨する恋人に落とすよりは怒らせて攫った方が面白いと喉を鳴らしながら仕事の席に着いた。背後で合掌する角脇と柳田を無視して。


 

 

 

「えへへ~。総兄さんのためなら自分なんでもしますよ~」
「んなら、ジジイを会長の座から下ろせ」
「総さんっ! 結城さんもダメですよ!!」
「このまま『蓮華』に行くとかアホか! ぜってー俺に支払わせる気だろ!?」
「ははは、そんなわけないじゃないか。ただ圭太のカードを貸してもらいたいだけ」

 

 三軒目を出た頃には、二十三時半を回っていた。
 酔っぱらった結城とは違い、介抱する龍介と全部の支払いをさせられた圭太の顔は別の意味で真っ赤で、隆成だけが笑っている。
 多忙な『六家』が五家も揃うなんざ暇人すぎると思うが、ギスギスした仲よりはマシかと笑みを零した。

 

「おら、解散すんぞ。龍介は結城を送ってけ。送り狼になんなよ」
「ならナイ!」
「圭太も御馳走さん。今月の回線費をタダにしといてやるよ」
「それ以上に払ったわ!!!」

 

 悪友其の二の肩を叩くと、反対の肩を其の一が叩く。
 そんな俺達に圭太はガックシと肩を落としたが『おめでとさん』と言って隆成の車に乗った。元気に車窓から手を振る結城にも手を上げて応えると、角脇が運転する車に乗り込む。 

 

 出発と同時に携帯を確認すれば残り一家や両親。藤色や、なりー社長からも祝いのメッセージが入っていた。マメな連中だと煙草を咥えるが、火も点けず、ただ煌びやかなイルミネーションを車窓越しに見つめる。

 

 誕生日に興味はねぇが、覚えてるヤツらがいて祝われるのも悪くなかった。
 考えれば、アイツの誕生日を知った時も何かプレゼントやるかと考えたし、自分が思っている以上に興味を持っていたらしい。

 

「くくっ、誕生日を喜ぶ日がくるとはな」
「それは良かったです」

 

 独り言が聞こえていたのか、返事をした角脇をミラー越しに見る。助手席に座っていた柳田が振り向いた。

 

「社長に受け取ってもらえないかと思ってましたが……大丈夫そうですね」
「ああ? なんの話だ」
「我々からの誕生日プレゼントですよ。一応、社長ですからね」
「ケンカがプレゼントか? なら「着きましたよ」

 

 買うぞと言う前に、とある場所で車が停まった。
 そこは覚えがあるどころか常連の店とも言える高級クラブ『蓮華』。だが、当に閉店時間で入れはしない。なのに、ホステスとは思えないほど不機嫌な女が立っていた。煙草を戻すと窓を開け、声をかける。

 

「よう、風。タクシー待ちか?」
「そうよ。帝王行きってタクシーにね。文句ある?」

 

 愉快な俺とは違い、風こと千風は赤めた頬を膨らませる。
 それだけで『プレゼント』の意図がわかり、意地悪するように返した。

 

「文句はねぇが『帝王に啼かされイき』の間違いだ。それで良いなら祝ってから乗れ」
「帰るうううぅぅ!」

 

 逃げ出す手を掴む。
 振り解くことは出来るだろうが、振り向いた千風は悔しさを滲ませながらも俺の笑みに震える口を開いた。

 

「た、誕生日……おめでとうございます」

 

 カメラの範囲外なのか、ちーの声に掴んだ手を引っ張ると口付ける。離せば眉を吊り上げたふーに替わり、俺の視線に観念するように言った。

 

「おめでとう……」
「おう」

 

 また口付けると、ありがたく千風(プレゼント)を食いに自宅へ車を走らせた。


 

 

 


「っあ、ああ……待って、総一郎……まだあ……ああっぁぁ!」

 

 数時間前まではつんけんだった表情が蕩け、嬌声を響かせる。
 自宅マンションに連れ込んですぐ脱がすとベッドイン。互いの汗を舐めあっては感度を高まらせ、背後から千風を抱きしめると、ドロドロに濡れた秘部に挿入した。ベッドの軋む音に構わず速度を速める。

 

「ふあっ、あっ、あああぁ……ダメぇ……すぐイっちゃ……待って待ってええぇ!」
「俺が待つわけねぇが、交代は許してやる
「ああっ、それも待っ……ひゃああああぁぁっ!」

 

 カチリとレコーダーを切ると、ふーからちーに替わる。
 突然の刺激に驚いたのか、大きくのけ反ったちーは涎を零した。痙攣にイったなと思いつつ、速度を緩めることなく肉棒を突き上げ、両胸を揉み込む。

 

「っああぁ……帝王しゃま……そこはダメ……イったばっひゃで」
「そこってどこだよ? ココか? それともココ?」
「ひゃああああぁぁっ!」

 

 呂律の回っていない声にくすくす笑いながら、ぐりぐりと肉棒を押し込んでは尖った胸の先端を引っ張る。それだけで結合部からは蜜が噴き出し、ちーは項垂れた。

「どうした、ちー……俺はまだ満足してないぞ」
「あっ、ふっ……ああぁ」

 

 うつ伏せになったちーの腰を持つと、また肉棒を押し込む。
 その度に嬌声が上がり、蜜が飛び出てくるが、ちーの表情は緩んでいた。

 

「あ、あああぁっ……イい……そこ好き」
「ココだな?」
「あああぁぁあぁンンっ!」

 

 反応があった箇所を執拗に攻め立てると、嬌声と共に締まりが良くなり、快楽が駆け上ってくる。

 

「っ……!」
「ああぁ……」

 

 肉棒を引っこ抜くと、噴き出した白濁がちーの背中にかかる。
 それを手で塗りたくると仰向けに転がした。息を切らしながらも笑顔の女に口角を上げる。

 

「Mめ」
「私はっ……あ、フツーんんっ」

 

 嘘つきの声は唇で塞ぐ。だが、確かにちーはそんなにMじゃないかと、レコーダーのスイッチを入れた。同時に胸の谷間に肉棒を挿し込む。

 

「ちょっ、何よ……その目は……あんっ」
「別に。お前がちー以上に満足させられんのか心配でな」
「バ、バカにしないで!」

 

 挑発に乗ったふーは両胸を両手で押さえると、肉棒をいっそう強く挟む。そのまま上下にゆっくり動かした。
 弾力と厚みのある壁に包まれ擦られる肉棒の刺激が全身に伝わり、汗を落とす。が、口元は笑みのまま意地悪く言った。

 

「こんなんじゃ……っ、ちーに勝てねぇぞ」
「むっ……んんっ」
「っぁ……!」

 

 また挑発に乗るように、口を開いたふーは亀頭に食いつく。
 荒々しくしゃぶっては胸で扱くが、その目は肉棒ではなく俺を見上げていた。『どう?』と、不安そうな表情で。

 

「……っは、良い子だ」
「っんんんん゛ん゛ん゛!!!」

 

 褒美だと頭を固定すると、勢いよく肉棒を咥え込ませる。
 大きく目を見開きながらも必死にしゃぶっているのが伝わり、褒めるように頭を撫でた。それだけで頬を赤め、嬉しそうな顔をする。珍しい表情に、脈動を打った肉棒から白濁が噴き出した。

 

「っんんんンンっはあ!!!」

 

 引っこ抜くと、顔にも白濁が散る。
 息を切らしながら見下ろすと、ふーは涙目で咳き込みながらも両手を伸ばした。応えるように抱き上げると口付け、秘部に肉棒を擦りつける。

 

「あっ……」
「次はすぐイくなよ」
「イったら……ちーと交替?」

 

 不貞腐れた顔に苦笑するのは“同じ”くせに勝負心があること。
 だが、嫌いじゃない俺は頭を撫でると亀頭を挿し込んだ。

 

「関係ねぇよ。啼かされてイった方の勝ち……どっちも満足させられなかったら俺の勝ちだ」
「俺様……あんっ!」

 

 呟きを聞き逃さなかった俺は勢いよく挿入する。
 激しくすればするほど文句を言われるが、汗も蜜も嬌声も悦ぶように散り、もう一人に替えても同じだった。“二人”が悦べば悦ぶほど俺もまた悦ぶのは、誕生日に二人がいるからだろう。

 

 誰といるかで気持ちも変わる。
 そう考えると、誕生日も案外良いもんだ──。

 


「それから千風は五回ずつイきやがったな」
「はひいいいぃぃっ!」
「それ以上言ったら捻り潰すぞ帝王っ!!!」


 幼馴染コンビで遊べるのも愉快なもんじゃねぇか────。

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