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番外編*5月27日*春冬誕生日

 いつもと変わらない朝。
 制服に着替え、まだ眠い頭と足で階段を下りると、リビングに顔を出す。

 

「おは「誕生日おめでとー!」

 

 笑顔の父さんに拍手で迎えられた。
 若干寝ぼけながらも考え込むと、脳内の冬とハモる。

 

「(あ……誕生日か)」
「そうだよ~。今日、五月ニ十七日は春冬くんの誕生日。お祝いに、パンケーキ十八枚焼いたから食べて!」
「朝から重いっ!」
「こうふゅう朝ごひゃんも、たまにゅはいいわね」
「先に母さんが食べてるんだけど! 十八枚が減る!! むしろ俺、0歳になっちゃうっ!!!」
「冬花さん、食べながら喋ったらダメだよ」

 

 ひとつの皿に積み重ねられた生クリームたっぷりのパンケーキを、当人を差し置いて食べる母さんにツッコむ。だが、背中を押されながら席に着くと食べるのをやめ、父さんも席に着くと二人の目が俺を映した。ゆっくりと弧を描いた口が開く。

 

「「誕生日おめでとう、春冬」」

 

 重なった声と笑顔。
 それはきっと冬にも向けられていて、次第に熱くなる頬が“春冬”のだとわかる。二人になっても毎年祝ってくれる両親に、はにかんだ。

 

「ありがとう……」

 

 照れくさいのは変わらない。
 それでも返ってくる頷きと笑顔に、最高の誕生日がはじまったのは間違いない。パンケーキが多すぎる以外は──。

 


 

 


 

(千風に『おめでとう』と言ってもらえないのは?)
「言うなよバカ冬ーっ!」

 

 夕暮れと共に帰宅した俺は、意地悪を言う相方にツッコミながら着替える。
 今日は誕生日。学校でも同級生からお祝いされたり、白鳥さんからもケーキを貰った。執事もお祝いの言葉と一緒に手合わせしてくれたりと、充実していたと思う。軟体動物じゃないかと思われる、なりー師範の手合わせは置いといて。

 

(しかし、雅臣もすごいのを送ってきましたね)
「ねー」

 

 互いに感心するのは、宅配で届いた雅からの誕生日プレゼント。
 アイスを持った笑顔ちぃと、不機嫌そうに腕を組んだふぅの|二頭身《デフォルメ》フィギュア。ピンクの台に並んだ制服の二体は、本当に千風が縮んだと思えるほどの完成度……だが。

 

「このショーツは持ってないから、再現率八十パーセントかな?」
(…………)

 

 裏返すと、ちゃんと履いていた。が、記憶にない下着のためマイナス。
 なぜか冬がドン引きしているが、構わずお礼のメールを送ると、フィギュアをポケットに入れる。そのまま眼鏡もかけず家を出ると、薄暗い中でも慣れた足が隣の荒澤家に向かう。

 

 日課になっているのもあるが、やはり一番祝ってもらいたい幼馴染に未だ祝ってもらえてないのが辛い。フィギュアと違って柔らかくて暖かくて罵って悦ばせる大好きな幼馴染に。

 

「わかってての無視で放置も最高だけどね!!!」
「お嬢様ならお風呂ですよ」
「最っ高!!!」

 

 玄関に入ってすぐ待っていた家政婦の柏木ばっちゃんの笑顔と情報に、花を飛ばしながら風呂場に向かう。
 閉じられた脱衣場の扉から聞こえる水音。そして、うっすら漂う湯気と香りを発する主を想像すると頬が緩んだ。

 

「っああ……ゾクゾクするぅ」
(春、今すぐ替わって永遠に引っ込んでなさい)
「ええ、なん……!」

 

 黒い笑顔を向ける冬に反論する前に、ガチャリと扉が開く。
 先ほど以上の湯気と香りを引き連れ現れたのは、濡れた髪をタオルで巻き、キャミソールとショーツだけの千風。不機嫌顔の彼女に、額を押さえる冬と同じ気持ちになりつつ、半笑いした。瞬間、みぞおちを食らう。

 

「げふうぅっ!!!」

 

 容赦ない攻撃に、床へ倒れこむ。
 ドタンと大きな音が響き、彼女の頭上で勝者のゴングが鳴った気がした。慣れている柏木ばっちゃんが来る様子もなく、お腹を押さえる俺の手を足で払って仰向けにした千風に見下ろされる。

 

「何してるんですか、変態」
「バ……バスマット?」
「へー……」

 

 黒い笑みを浮かべる、ちぃ。そして、躊躇いもなく俺のお腹に乗ると、足踏みをはじめた。

 

「っあああ!」
「バスマット、ですよね?」
「そ、そうですううぅ」

 

 本物のバスマットにする以上の激しい足踏みに、足裏に残っていた水滴が上着を濡らし、爪先で顎を撫でられる。さらに俺を見下ろす冷ややかな目と笑みが、痛みよりも興奮を募らせた。

 

「っはああ……ちぃ最高……ちぃSいぃ」
「私はフツーです」
「あああぁぁ……!」

 

 にっこりと微笑んだ彼女は、言葉とは裏腹に股間を踏む。
 ズボン越しでもわかるほど膨れ上がったモノを片足で押さえ、片足の爪先で踏んでは擦られると歓喜が増した。

 

「っあああ゛あ゛……ダメ……イ「はひ、終わりー」

 

 絶頂を迎える前に、ちぃが下りる。
 そのまま振り返ることなく自室に入る背中を見送った俺は廊下に放置された。が、息を乱す口からは涎が零れ、頬はお風呂にも入ってないのに赤く、満面笑顔。

 

(自分とは思いたくないです)
「ええ……なんで? 最っ高じゃん……」

 

 心底軽蔑しているような相方に構わず、股間を手で押さえたまま芋虫動きで廊下を進む。寸止め最高、Sちぃ最高と花を飛ばしながら千風の部屋にたどり着くと、またガラリと襖が開いた。
 見上げると、ワンピースパジャマを着たちぃ。変わらず不機嫌顔だが、何かを差し出された。上体を起こして受け取ると、手に収まるほどの鉢。ミニトマトの苗だ。

「何? どうしたの」

 

 家庭菜園を趣味としている彼女が持ってておかしくはないが、貰うのははじめて。育てるなら任せてよと意気込むと、ちぃはそっぽを向いた。

 

「何って、プレゼントです」
「え?」

 

 反応するように顔を上げる。
 そっぽを向いたままのちぃは頬を赤めると、ぶっきら棒に言った。

 

「誕生日……おめでとうございます」
「っ……!」

 

 今日一番聞きたかった、言ってもらいたかった言葉。
 寂しかった心を簡単に埋めていく彼女に、自然と鉢を床に置くと抱きついた。

 

「はひっ!?」

 

 突然のことに驚いた千風は為す術もなく自室に、畳の上に倒れる。柔らかい胸に埋めた顔を左右に揺らし堪能していると頭を叩かれた。

 

「ちょっ、春ちゃ……んっ!」

 

 文句は口で塞ぐ。でも、一回では足りない。
 動く身体を押さえ、もっともっとと口付ける。静かな室内には可愛いリップ音と息が響き、身体が熱く、寸止めされていた下腹部が疼いた。が、頭の奥で“もう一人”が浮かび、ズボンの後ろポケットに入れていた携帯を放り投げる。動画ボタンを押して。

 

「ちょっ、冬っ! 何す……んっ!?」

 

 ちぃとは違う睨みを向ける“ふぅ”に替わると同時に“僕”も口付ける。
 ちぃ以上に抵抗されるが、構わず唇を重ね、舌を挿し込んだ。が、噛まれる寸前で引っ込める。危ない危ないと自分の上唇を舐めていると、真っ赤な顔で睨み続けるふぅは、手で口元を隠したまま言った。

 

「何ずんのよ……!」
「何って、プレゼント貰ってるんですよ」
「ミニトマトあげたじゃない!」
「それは春へでしょ。俺のは?」

 

 にっこり微笑むと、ふぅは考え込む。
 真面目だなぁと見つめて数分。ふぅは、ゆっくりと視線を逸らした。

 

「オ、オクラでもひゃっ!」
「嫌なので、ふぅを貰います」

 

 微笑みキープでスカートの中に手を入れる。
 風呂上がりなだけあって触り心地が良く、手も滑る。腰まで捲くし上げるとショーツが見えるが、すぐ両手で隠された。

 

「だからなんであたしにな「そういえば、まだ聞いてないんですけど?」

 

 遮ると『何を?』と、眉を顰められる。
 前屈みになった僕は顔を近付けると鼻と鼻をくっつけ、そっと囁くように言った。

 

「おめでとう、って」
「……っ!」

 

 ビクリと、ふぅの身体が揺れる。
 真っ赤な顔のまま視線をさ迷わせているが、ぎゅっと唇を嚙み締めると、震える口を開いた。

 

「っ……誕生日……おめでと……」
「はい、ありがとうございます」
「ひゃっ!」

 

 満足気に微笑むと同時に腰を持ち上げ、ショーツを下ろす。そして、悲鳴に構わず、露になった秘部に顔を埋めると舐めた。

 

「ああぁ……! ちょっ、冬っ……!!」
「おめでとうはおめでとう。プレゼントはプレゼントです」
「コンニャ……ゃあっ!」

 

 文句は秘部を舐めれば舐めるほど嬌声に変わる。
 そんな彼女のように僕の頬も赤くなっているのを知るのは春だけだろう。蜜がいつもより甘いのも、自分が思っていた以上に『おめでとう』が嬉しかったからだ。

 

「結局は“春冬”……ですからね」
「は……んっ!?」

 

 息を乱しながら見下ろすふぅに口付ける。
 最初より抵抗はなく、挿し込んだ舌にも舌を絡ませてきた。だが密着すると、ふぅの身体が強張る。蜜を零す秘部に、硬い肉棒を宛がったからだ。
 白糸が繋がる唇を離すと、何か言いたそうなふぅに意地悪く言う。

 

「プレゼント、ください」

 

 返事は、宛がった肉棒に落ちてきた蜜で肯定と捉え、先端を挿し込んだ。

 

「っああぁ……」

 

 声を出したのは、ふぅ。
 それでも奥に進めば進むほど僕の声も混ざる。

 

「あぁあ……」
「ゃああ……あああっ!」

 

 咄嗟に腰を引き寄せると、一気に肉棒が奥を突いた。
 無意識であろうふぅがしがみつくと同時に大きく腰を動かす。

 

「ひゃあああぁぁんんっ!」

 

 襖を開いたままのせいか、声を漏らさないよう口付ける。
 だが、欲まみれの身体は足りないというように打つスピードを上げ、厭らしい水音を響かせた。

 

「っ……!」
「んんんん゛ん゛っっ!!!」

 

 ビクリと身体が反応すると、熱を帯びた肉棒から白濁が噴き出す。
 逃げる彼女を抱きしめ、結合部から零れる互いの蜜を見つめた。視線を上げれば、朦朧としたふぅと目が合い、唾液を零す唇に口付ける。

 

 瞬間、世界が真っ白になるが、視界はすぐ戻る。
 乱れる息を止めた口元に弧を描くと、足で携帯をズラした。そして、汗ばんだ両手で、同じように汗ばんだ乳房を揉む。

 

「はひっ!」
「あはっ、感度良いね、ちぃ」
「ちょ、春ちゃ……ああ!」
「ああぁっ……!」

 繋がったまま“ちぃ”を後ろ向きにしたせいか、声が漏れる。それだけで、出したばかりの肉棒も硬さと膨らみを増した。

 

「あぁ……春ちゃん……プレゼントあげた……でしょんん」
「うん、貰ったよ……だから」

 

 蹲ったちぃのお尻を突き出させると、浅めに肉棒を動かす。
 そのまま上体を屈め、うなじを舐め、ブラの中に潜らせた両手で乳房を揉んだ。指先で先端をイジり引っ張れば、ちぃの身体は大きく跳ね、肉棒が奥に招かれる。
 艶やかになる嬌声と、息を乱し、涙目で訴える姿に笑みを浮かべた。

 

「貰った……お礼、ね……っ!」
「――っ!!!」

 

 腰を持つと、勢いよく挿入する。
 ふぅに与えられた快楽だけでは足りなかったのか、突く度に嫌だと言いながらも脚を、股を広げ、受け入れてくれた。白濁も蜜も汗も口付けも、いつもより嬉しく最高だと思えるのは特別な今日だからか。それとも“春冬”で喜んでいるのか。

 苗が育つ頃にはわかるといいな――。

 

 

 


「はひ? なんです、この人形」
「あっ! そ、それは雅があああああぁぁちいいぃぃっっ!!」

 

 コロリと落ちてしまった物を拾った本人(千風)は、問答無用で分身(フィギュア)を池に投げ捨てた。
 当然、びしょ濡れ&泣きながら拾ったよ――――。

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