00話*「幼馴染」
出逢った時からずっと一緒だった。
傍にいたい、護りたい、ただそれだけだった。
“もう一人”が生まれても変わらない――はずだった。
「んっ……あっ、ああっ……!」
甘い声。柔らかな肌。艶やかな黒髪。零れる蜜。潤んだ瞳。
十年以上一緒にいてはじめて見る姿は酔いしれるほど耽美で、喉を鳴らすと白い肌に汗が落ちる。
「春……ちゃ……ん」
息を荒げながら呼ぶ声は聞いたことないほど苦しそうで甘い。
それだけで充分俺を……“俺達”を支配する。
「んっ、ちぃ……可愛い……もっと」
沸き上がる高揚感と欲情に我慢は効かず、汗と蜜にまみれた身体を抱きしめると口付けた。
「春っん……んんんっ!」
逃げようとする唇を追うように重ね、舌を差し込む。
唾液が零れようが、暴れようが、涙を落とされようが離すことはしない。また熱くなった肉塊を濡れた蜜口に食い込ませると、虚ろだった彼女の瞳が大きく見開かれた。
「ダメ……もうやめ……」
「ヤダ……」
否定を否定で返すと口角を上げ、焦らすことなく貫く。
「ひゃあああぁぁっ!!!」
甲高い声に構わず腰を動かし突き上げる。
渦巻くものを払うように、植えつけるように、何度も何度も。
「あ、ああぁっ……!」
「っ……!」
何度目かの絶頂は直ぐに訪れ、仰け反った身体を抱きしめると一緒にシーツへと沈む。
息を整えながら結合部を抜くと、白濁が蜜口から零れているのが見えた。すると頬に震える手が触れ、不意に上体を起こす。
「ち……っ!?」
瞬間、振り上げられた手に頬を叩かれた。
鈍い音が室内に木霊するが、静寂が戻るとゆっくりと見下ろす。その目は涙を落としながらも鋭く、纏う空気も違う。熱と痛みを帯びた頬に手を添えた“僕”は笑みを向けた。
「最高にイい顔をしてますね……“ふぅ”」
「こんのっ……バカ“冬(かず)”っ」
恨むような声にさっきまでの甘さはない。
それでも顎を持ち上げると口付けた。嫌がる身体を押さえつけるように抱きしめたまま沈むと、今度は“僕”が“彼女”を堪能しはじめる。
“春”と“ちぃ”。
“冬”と“ふぅ”。
身体はひとつ。
でも、互いにもう一人の人格を持つ僕達は二重人格で幼馴染――だけを、僕達はやめた。