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懐中時計

​番外編*2月2日*慶二誕生日

*慶二視点

 肌寒さを覚える明け方。
 二月でも全裸で就眠につくのは暑がりなのと性分。それよりも眠い。朝が弱い私にとって起きることが何よりも苦痛で、何度目かの携帯《アラーム》を停めても唸っていた。そこに、ノック音が響く。

「慶ニさーん、おはようございまーす!」

 

 返事も待たず、元気な声で零花さんがドアを開ける。
 寝坊キャラに見えて実は早起きが得意な彼女が羨ましい反面、自分が寝坊キャラで良かったと思うのは性癖が叶うからだ。
 しかし今日は下腹部ではなく、お腹に抱きつかれた。

 

「ぐふっ!」
「あ、すみません」

 

 小柄とはいえ、空手で鍛えた衝撃に脳が揺れる。
 目眩を覚えながら不機嫌顔で見下ろすが、顔を寄せた零花さんは満面笑顔を返した。

 

「誕生日おめでとうございます!」
「……what(はい)?」

 まだ目覚めていないせいか理解できず英語で返す。
 枕元に置いていた私の携帯を手に取った彼女はホーム画面を見せると日付を指した。

 

「今日、ニ月ニ日は慶ニさんの誕生日ですよ。私、0時前に寝ちゃったんで、朝イチで言おうと決めてたんです!」

 

 眼鏡をしていない目でも見えるようにと画面を近付けてくれるが近すぎて逆に見えない。だが、自分事のように喜んでくれていることに頬が緩むと抱きしめた。
 すっぽりと埋まった彼女も腕の中で頬を擦り、顔を上げる。視線が重なれば自然と唇が合わさった。

 

「んっ……ぁんっ」

 

 角度を変えて舌を挿し込めば絡み返され、頭を固定すれば深くなる。
 静寂が包む室内に響く小さな喘ぎと蜜音。カーテンから零れる太陽よりも艷めき、離した唇から涎を垂らす恋人に微笑んだ。

 

「ありがとうございます……零花さん。とても嬉しいです」
「えへへ」
「では早速、お口での奉仕をお願いしましょうか」
「へ……ひゃっ!?」

 

 目を丸くした隙に反転。彼女の口に昂ぶった肉棒を宛てがうと、慌てた様子で腰を押された。

 

「ま、ままま待ってください! プ、プレゼントHは夜にしましょ!! ねっ!!?」
「なにを言いますか、これはいつもの朝フェラですよ。まだ目覚めてないので、早くその興奮する口に捻じ込んで起こしてください」
「言い方っ! ていうか完全に起きてるじゃないですか!! この体勢もフェラじゃなくてイひゃまんんんんンンっ!!!」

 

 叫びを塞ぐように喉奥まで肉棒を押し込むと、誕生日じゃなくとも嬉しい性処理を家性婦さんにお願いした。
 寝坊キャラのイラマフェチで本当に良かったです。


 

* * *

 


「あ、ケイくーん!」

 

 穏やかな声で駆けてくるのは実兄。大学構内で、手を振りながら、笑顔で。
 すべての授業が終わったとはいえ、眉目秀麗で『兄』と書かれたTシャツを着用したはじめ兄さんに周囲は戸惑い、私は大きな溜め息をついた。

 

「あれ? どうしたの? 誕生日なのに重いよ? 大丈夫?」
「No problem(問題ありません)……急にいらしたので驚いただけです。何か用事でも?」
「ふふっ。散歩しててね、あ、ケイくんと一緒に帰りたいなって思って」

 

 そう笑顔で言いながら手を合わせる。
 端から見れば『それだけ!?』と思われそうだが、この兄に関しては『あるある』だ。また溜め息をつくと車の鍵を差し出した。

 

「鞄を取ってきますので先に車に行っててください」
「僕、ケイくんの車どこにあるかわかんない」
「……では、部屋まで一緒にきてください。零花さんにも連絡を」
「あ。レイちゃんの所にも寄ったらね、予約してるケイくんのケーキを受け取って帰ってねって言われたんだ。『Nari菓子』なんだけど」
「まだ受け取っていない上に誕生日主(私)に言いますか」

 

 ケーキを持ったまま来られるのも困りものだが、閉店ギリギリになるのも困りもの。それらすべて『兄だから』で終わるのもどうかと思うが納得してしまうのもお決まりで、メモに書かれた店にすぐさま連絡を入れた。

 

 時刻は夜の八時を過ぎ、車で自宅へと向かう。
 助手席に座る兄は無事に受け取ったケーキを膝に乗せ、ずっと喋り続けていた。

 

「それでね、ミツくんは今日がケイくんの誕生日って忘れてたみたいで……急いでお仕事終わらせるって言ってたよ。シロくんは十時過ぎには帰れるって」
「そうですか」

 

 一言返すだけだが、内心驚いている。
 仲は良いといっても以前は祝うどころか兄ぐらいしか誕生日を覚えていなかったし、多様な職種で必ず帰ることもなかったからだ。それもすべて彼女のおかげかと思うと自然と頬が緩み、察した兄も微笑む。

 

「ふふっ、ケイくんの後はレイちゃん……愉しみが続くね」
「今年は三月一日でしたね」

 

 零花さんの誕生日は四年に一度となる二月二十九日。
 今年は残念ながらないため別日が代理になるが私は仕事。今日のように朝フェラと夜に兄弟と犯すぐらいかと考えていると、兄がくすくすと笑う。

 

「うん、いっぱい犯さなきゃね。レイちゃん、実家では忘れられていたみたいで、サユちゃんと元彼くんぐらいしか祝ってくれなかたって言……って、ケイくん。急ブレーキは危ないと思うよ」

 

 赤信号とはいえ、ブレーキを強く踏んでしまう。
 やんわりと注意する兄に眼鏡を上げながら謝罪するも、募る苛立ちに優しく犯すのはやめようと再びアクセルに足を掛けた──『元彼』、地雷なので。

 


 

 

「ちょっ……なんっ、あんっ!」

 

 官能な声が反響し、吐息と湯気が混ざる。
 小柄な体型に反して両手が埋まるほど大きく柔らかな乳房を揉み込めば、泡にまみれた彼女はいっそう声を上げた。

 

「ああぁ……もうっ、慶二さ……いったいなんっンンンっ!」

 

 喘ぐ零花さんに口付ける。
 帰宅早々、彼女を抱え向かったのはお風呂。洗い場に対面座りし洗い合っているのだが、舌先で口内を蹂躙しては指先で両乳首を引っ張るといういつもより強引な私に涎を垂らす彼女は眉を落とした。

 

「なんで怒ってるんですか……」
「わかります?」
「問答無用でお風呂でしたからね……んっ」

 

 頬を膨らませながらも、差し出した腕を乳房で挟むと泡を立てるように扱いてくれる。重厚な肉壁は暖かく気持ち良い。吐息を零しながら彼女の口元に指を伸ばせばひと舐めされ、しゃぶられる。

 

「っはあ……零花さんの可愛らしいご奉仕に、何に怒っていたかも忘れそうです」
「……ホントですか?」
「ええ……下のもシていただけたら」

 

 怪しむ目にくすりと笑えば視線を落とした彼女は黙る。だがすぐに自身の身体にボディソープを掛け上体を丸めると、大きく勃っている肉棒を乳房で挟んだ。

 

「っはぁ……」

 

 呻きに零花さんの頬が緩む。
 気を良くしたのか悪戯心が芽生えたのか、上下左右に扱いては頬で亀頭を擦り、泡とは違う粘着ある白糸を伸ばした。

 

「慶ニさんの悦んでる……嫌なことはイいことに変わりそうですか?」
「そうですね……もう少し、でしょうか?」

 

 意地悪く笑いながら両手を伸ばす。
 躊躇いなく抱きついてきた彼女は首に両腕、腰に両脚を回した。支えるように私も背中に両腕を回せば上下に動き、柔らかな乳房が硬い胸板の上を滑っては先端同士が擦れあう。
 お風呂場の熱さとは違う熱に息を切らし、小さなお尻を両手で包んで撫で回すと、拡げた秘部に泡を付けた肉棒を挿入した。

 

「あああぁぁンンっ!」

 

 零花さんはのけ反るが、落ちないよう必死にしがみつく。深く締まる結合部に快楽が昇ってきた。

 

「ああっ、気持ちイい……やはり零花さんのナカで洗ってもらうのがイいですね」
「ふぁああ……慶二しゃ……そんな動かなああぁあぁ!」

 

 懇願を打ち消すように身体を丸めると激しく腰を動かす。
 お湯以上に熱いナカに包まれた肉棒は何度も最奥を突いて愛液を、さらに腰を押し付ければ滾りを放出した。ビクビクと痙攣している結合部からは混じり合った互いの蜜が零れる。

 

 が、ここはお風呂場。
 どれだけ出しても掃除が手軽な場所に、挿入したまま零花さんを反転させると虚ろだった目が見開かれる。

 

「へっ!? ちょ、待っ! まだイったばかりで待っああああぁぁ!!」

 

 制止を無視し、俯せの彼女をいっそう激しく犯す。
 突き落とす肉棒と腰遣いに喘ぎと蜜音が反響するが、慄きながらも私を見上げる目は欲情に満ちている。それだけで腰が震えると、先ほど以上に濃厚な滾りが最奥に流れ込んだ。

 

「あああぁぁ……ナカに熱いの……慶二しゃんのしぇーえきがああぁ……っ!」
「ええ……零花さんのお腹(ナカ)を私で満たせるなんて最高のプレゼントですよ……でも一番は」

 

 肉棒を引っこ抜くと、あらゆる汁が秘部から溢れる。
 仰向けにされた零花さんは既に意識が朦朧としているが、顔に跨った私をちゃんと捉えていた。そして震える唇をゆっくり開くと、真上から落ちてくる肉棒を咥える。

 

「んふっ、んっ、んっ……」
「ああ……イいですよ……さあ、今度はお口からお腹(ナカ)に流し込んであげましょう……ねっ」
「ふんぐっ!?」

 

 彼女の頭を持ち上げると腰と同時に動かす。
 暖かい口内とザラリとした舌。滑らかな喉奥に亀頭があたる度に放出される白濁は止まらない。

 

「っんんぐ、んんん゛ん゛っ!」
「っああ……さすが零花さん……可愛らしいですよ……もっと見せてください」

 

 抜くどころか両手両脚で頭を押さえ込む。
 当然苦しさから零花さんは身動ぎ目尻から涙を、秘部から潮を噴くが、涙目に映る私ははにかんでいた。大好きな恋人を大好きな喉淫(イラマ)で犯し、嘔吐いてはもっと喉奥へと招いてくれる悦びに肉棒を捩じ込むと性を放つ。

「んん〜っ! んんんん゛ん゛っぱあ……っはあはあ……はあ」

 

 大きくのけ反り、肉棒を引っこ抜かれた零花さんは咳き込む。その口からはダラダラとはしたなく愛らしい白濁や涎が零れ、息を切らす私は彼女の頬を包むと口付けた。

 

「んふっ、んっ……イいですね……とても素晴らしいプレゼントです」
「んっ、ん……もう……こんな汚い顔(プレゼント)で悦ぶ変態……げほっ……慶二さんだけですよ」

 

 嗚咽を零しているが頬が膨らんでいる。
 苦笑すると優しく抱き上げ、頭を撫でながら何度も口付けた。

 

「それは良かったです……んっ、これから誕生日の度に口から犯す私を思い出してくださいね」
「? 慶ニさんの誕生日だけじゃなく?」
「ええ……誰の誕生日でもです……もちろん、零花さんの誕生日には今日以上に犯してあげますよ」

 

 涎を舐めながら微笑むと一瞬顔を青褪めたが、すぐ紅葉を散らす。思い出している姿に速くも股間が疼くも『ニイ兄、まだー?』『腹へったー』と叫ぶ弟たちの声にひと息つくとシャワーを手に取った。
 お湯を掛けられた零花さんは嬉しそうに頬擦りし、互いに付いた様々な証を落とす。

 

 名残り惜しくはあるが、まだまだ誕生日(夜)は続くのだ。
 地雷を埋めるほど濃く愛しい時間が──。

 

 

 

 


「慶ニさん起きてやが! 遅刻するに!!」
「ちょ……まだ眠……」
「Oh、ニイ兄しっかりー!」
「ハレンチ女まで寝坊とか珍しいな」
「ふふっ……誕生日だったからね」

 

 舞い上がるのは良いことだと思いますが、平日にするのはやはりキつ────。

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