カモん!
番外編02*「彼の誕生日」
*最終話前の話で、海雲視点から始まり、途中みきと変わります
時刻は夜の六時。
いつもより早くマンションに到着した俺はエントランスでコンシェルジュと挨拶を交わし、エレベータに乗り込む。いつもは寺置と一緒に帰宅するが『出張なので寄り道せず真っ直ぐ一人で帰ってくださいね』と言われた。
出張なんてはじめて聞いたが、嫌な予感がした場合は沈黙。
溜め息をつきながら階に着くと、玄関を開く──。
「お帰りなさいませ、御主人様!」
──閉めた。
階を間違えたかと表札の数字を見たが、間違いなく最上階俺の家。
なのに、ドアの向こうに正座していたのはなんだ?
誰かに似ていたんだが、服装と台詞で頭がショートした。何しろここは東京。そう東……ゆっくりとドアノブを握り、再び扉を開いた。
「うわーん! 海雲さんごめんなさいごめんなさい!! 冷たい目を向けないでくださいー!!!」
「みみみみみき!!?」
半泣きで勢いよく跳びついてきたのは、恋人みき。
綺麗な黒髪の天パは下ろしているが、服は黒のワンピースタイプ。袖はパフスリーブでスカートは膨らんだマイクロミニ。Uネック字で開いた胸元には白のレースがあり、首元には黒のリボン。腰には白のミニエプロンを付け、黒のニーハイを履いていた。
いつ福岡から、という台詞はすっ飛ばし、冷静を装ったまま問う。
「そ、その服は……?」
「ふぇ? あっ、友達に貰ったメイドさん衣装です!」
「メ、メイド……」
さすがにサブカルチャーに弱い俺でも知っているが、まさか目の前で拝むことになるとは思わなかった。身を屈めた俺に、みきは慌てた様子で両肩を叩いた。
「わわわ、どうしました!? 頭でも痛いんですか!!?」
「ああ……どう対処したもんかと……」
「誕生日にそれは大変です! ご飯よりも寝た方が良いですよ!!」
「いや、それ……誕生日?」
みきに背中を押されながら、スッカリ忘れていた事を思い出す。
リビングのドアを開くと、ダイニングテーブルにはハンバーグやスープやサラダの他、ワンホールのショートケーキが置いてあった。俺の前に立ったみきは笑顔を向ける。
「お誕生日おめでとうございます、海雲さん!」
「……ああ、ありがとう」
今日はニ月二十二日。俺の誕生日。
自分自身忘れていたのに、わざわざ上京して祝いの料理と言葉をくれた恋人。笑みを浮かべると、抱きしめて口付けた。
* * *
サプライズは成功!、でしたが、ドアを閉められた時はさすがに焦りました。
あ、海雲さんの帰宅を知ったのはコンシェルジュの人が連絡してくれたからです。お秘書さんから先に合鍵も貰っていたので用意出来ましたよ! メイド服はしょうちんからです!! あけおめメールの本当だったんだね!!!
メイド服に海雲さんはビックリしてましたが、久々の口付けは嬉しかったです。
私服に着替えた海雲さんは料理が並んだテーブルを見ながら席に着くと『美味い』と、小さな笑みを浮かべながら全部食べてくれました。私もニコニコです。
食後にお秘書さんから貰ったと言う袋を開くと、四角の箱にシャンパンが入っていた。それをグラスに注ぐとソファに座って喉に通す。
「美味しいですね~」
「好きだからな、あいつ……それより着替えないのか?」
「だってメイド服なんてもう着る機会ないですから。嫌いですか?」
「いや……慣れないというか……」
海雲さんの目が泳いでいる。
いえ、私も恥ずかしくないと言えば嘘ですが、海雲さん一人しかいないのでまだ大丈夫です。そんなことを思いながらシャンパンと一緒に入っていた箱を許可を貰って開ける──猫耳カチューシャだった。
「わーっ! ニャニャーですよ!!」
「ぶふっ! げほっけほっ!!」
可愛い黒猫耳を頭に嵌めるが、盛大に咽た海雲さんに驚き、背中を擦る。涙目で私を見ていた彼はソファに顔を埋めた。
「だ、大丈夫ですか!?」
「て、寺置に苦情を……」
「え? ああ、そうですよね。これ海雲さんへの誕生日プレゼントですよね」
「本気で俺宛なら今すぐ左遷してやる」
不吉な台詞を聞いた気がしますが、考えれば今日は猫の日。
長年お付き合いのあるお秘書さんさすがと良いますか、ネタ好きなのかもしれませんね。カチューシャを嵌めたまま、冷蔵庫からケーキを運んでくる。
「海雲さん、ケーキ食べましょう」
「その状態を受け入れているみきが怖い……」
「猫耳メイドさんはダメですか?」
「いや、それ以前の話……」
「あ、何も御奉仕してないからですね?」
「いや…………」
額に手を当て、溜め息をついた海雲さん。
その様子にメイドさんならご主人様に御奉仕だろうかと、ケーキを切り分けると隣に座って自分の膝を叩いた。
「どぞ、膝枕に使ってください! か……御主人様!!」
「………………とことんやる気だな」
海雲……御主人様はまた溜め息をつくと、私の膝に顔を埋める。
なんだか大きな猫みたいで可愛いです。そんな彼の髪を撫でていると、顔を上げた目が真っ直ぐ私に向けられる。それだけで動悸が速くなった。
「みき……」
「はははいっ!」
「……キス」
「はいっ?」
首を傾げると、大きな手が私の頬を撫で、御主人様がまた囁く。
「キスしろ……早く」
「うえっ!? は、はいっ!」
突然の“命令”に戸惑うが、自分で御奉仕と言ったのだからと、頬を赤めながら口付ける。上からするなんてあまりないせいか変に意識してしまった。すると“ペロリ”と唇を舐められる。
「ひゃうっ!」
「ちゃんとしろ……ほら、もう一回」
意地の悪い笑みを向けられている気がするが、顔が真っ赤な私は言われるがまま再び口付けた。今度は自分から舌を入れ、唾液が彼の中へと落ちて行く。
「んっ、ふぁあっ……んん」
「もう少し……ん……激しくだ」
「は、激しく……んん!」
口内に入れていた舌を抜こうとすると歯で止められ痛みが伝う。
嫌々と手で叩くと離れてくれたが、屈んでいたせいかすぐ横には御主人様の顔。すると首元に吸い付かれた。
「ああぁぁ……っ!」
「ん、嫌ってしただろ……」
「あぅっ、すみま……あぁぁん」
赤い花弁が付くと御主人様は上体を起こし、口付けを何度もする。
息を荒げていると『ケーキくれ』と命令が落ちた。既に蕩けている私は覚束ない手で切り分けたケーキを皿に乗せる。すると抱えられ、向き合うように膝に乗せられた。震える手で、フォークに乗せたケーキを開いた口に運ぶ。
「ど、どうでしょうか……?」
「ん……美味い……ほら……」
「へっ、あっ……!」
口付けと同時にケーキも入ってきて、甘いクリームの味に満たされる。
その隙に肩から服を脱がされ、ブラジャーが露になった。慌てて隠すが小さく叩かれた上、ホックを外される。尖った双丘を見つめる御主人様はくすりと笑った。
「美味しく食べてやらないとな……」
「ぇ……ああぁっ!」
手に付けたケーキや生クリームを御主人様は胸へと塗っていく。
薄ピンクだった乳首は白色に変わり、ソファに寝転がされた。覆い被さった彼は笑みを向けたままチロチロと舐める。
「あっ、やんっ……んんっ」
「んっ……甘い……ああ、もう着いたか」
「はぁんっ……」
クリームの中から顔を出したのは尖った先端。
一度ペロリと舐められると吸い付かれ、舌先で弄られる。気持ち良さに甘い吐息を漏らすと、彼はクリームが無くなっては足して舐め続ける。汗をかきはじめていると位置を反転するように御主人様の上に乗るが『お尻が顔の方だ……』の命令に反対を向く。
すると、スカートの中に手が入り、お尻を撫でられるとショーツを下ろされた。
「ああっ……ダメで……ひゃあぁぁっ!」
「ダメは……んっ、聞かない」
掴まれたお尻を落とされ、秘部に口付けられ舐められる。
生暖かい感触に身じろいでいると、御主人様の片手がズボンのファスナーを開けた。目の前には布越しでも大きく上を向いたモノ。
「んあぁっ……ああぁっ……」
「ほら……ん、御奉仕するんだろ……みき猫」
「ああっ……は……ぃにゃ……」
秘部を舐められるだけで愛液が増すが、その度に吸われ、快楽が駆け上る。その気持ちを彼にも与えたくて、大きくなったモノを取り出すと口付けた。御主人様の身体がピクリと動いた気がしたが、数度舐めると口に含み吸う。
「んっ……気持ふぁい……ですか?」
「あ、ああぁぁ……それでいい……んっ」
「はぁ……んんっ!」
互いに熱い蜜を出しては舐め舐められを繰り返し、秘部も手もベタベタになるが、構わず食べ続ける。けれど御主人様の舌使いの方が上手で、私が先に限界を迎えた。
「ご……主人……様……もうっ、あああぁぁーーーーっ!!!」
許可も取らず肉棒からも口を離し、愛液を噴出すように弓形になった。御主人様の顔にお尻を押付けてしまい、顔を愛液まみれにする。
「はあっ……ああっ……」
「こら……勝手に出すな」
「す……ませ……んんっ!」
怒った声が聞こえても、御主人様は愛液を舐めながら両手を伸ばし、胸を揉みしだく。その快楽に喘ぐことしか出来ない。
「ほら……俺がまだ気持ち良くなってないぞ……どうするんだ?」
「ふぁ、い……」
ゆっくりと胸から手が離され、背中を向けたまま御主人様の肉棒を跨ぐと手に持つ。次いで秘部へと近付けた。後ろから御主人様の視線を感じ恥ずかしくなるが、零れた愛液が肉棒を濡らしているのが見え、すぐ膣内に招き──挿入した。
「あ、あああぁぁぁーーーーっ!」
「ああっ……自由に……動け」
“命令”か“自分の望み”かわからない。
でも、腰は身体は勝手に動き、膣内を掻き乱す。腰を御主人様に持たれると上下に揺らされ、いっそう快楽が襲った。
「はぁ、はっ……んん゛っ!」
一気に押し寄せた波に、御主人様と共にイった──。
気付けばベッドで御主人……海雲さんの腕の中。
メイド服は脱がされパジャマを着てますが、猫耳カチューシャは嵌めたまま。それを手で弄っている彼を見上げる。
「あのー……海雲さん……?」
「……次は……猫になって乱れてみてくれ」
「………………はい?」
真面目な顔に何も言えず、今度は『ニャーニャー』啼きながら彼の誕生日を祝った────。