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銀河

キス22箇所シリーズ

「掌」

*ユフィ視点です

「ユフィの手は小さいな」

 指摘にカップを置くと、遊びにいらしていたヒナタ様と目が合う。

 向かいに座る彼女の目はジっと私、というより手に注がれ、自分の両手を見下ろした。

「そうですか? 同じぐらいだと思いますが……」

「いやいや、全然違うぞ! ほらっ!!」

 勢いよく立ち上がったヒナタ様は足早にやってくると、自身の手を私の手に重ねる。ぴっとりと合わさったはずなのに、指先も幅もヒナタ様の方が少しばかり大きくて目を丸くした。

「まあ……」

「肌も白いし、手入れされた爪は宝石のようだし、柔らかいし、良い匂いするし、美しい手だっぶ!」

 興奮気味に語るヒナタ様に圧倒されていると、背後から彼女の頭を容赦なく叩く手。しゃがみ込んだ彼女を見下ろす琥珀の瞳は蔑むように冷たいが、はっと気付く。

「ルー、何をなさるのです!?」

 立ち上がった私は咎めるが、目先に立つルーことルーファスは気にした様子もなく溜め息を吐いた。

「明らかな暴言を止めただけです。存在自体が変態のようなものですが」

「無礼ですよ! ヒナタ様は私の大切な友人です!!」

「そうっ、私ほどユフィを愛している者はいないっ! 浅葱少年以上だと自負するぞ!! さあユフィ、私と結婚しよう!!!」

「ヒナタ、少し黙ろうか」

 

 高らかに宣言するヒナタ様を止めるように、護衛のアズフィロラ様が割って入る。不満を漏らしながらも手を取り合っている二人は仲睦まじく、とても羨ましく思えてしまうのは、自分達と違うからか。

 そこで、アズフィロラ様の手がヒナタ様より大きいことに気付き、咄嗟にルーへと目を移す。けれど、腕を組んでいてよく見えない。必死に頭を斜めにしたりしていると、気付いたように振り向いてくれた。

「何アホやってるんですか、ヴァーカ」

「マ、マオンちゃんの肉球が気持ち良いだけです!」

 顰めた顔と口癖に、足元で寝ていたマオンちゃんの手を握る。

 寝ぼけた顔に内心謝るが、実際ぷにぷにした肉球はとても柔らかくて気持ち良い。夢中になっていると、ヒナタ様も反対の手をぷにぷにする。

「ん~、気持ち良い~。ああ゛っ、待ってくれマオン! ほら、懇願のちゅー!!」

 起き上がるマオンちゃんの肉球に、ヒナタ様がキスをする。

 それを見たアズフィロラ様は至極真面目な顔で『肉球とはどうすれば手に入るんだろうか』と呟き『生まれ変わるしかないのでは』とルーが蹴る。

 私はまた自分の手を見下ろした。

 

 

* * *

 

 ヒナタ様達もお帰りになられ、夜も深まった頃。

 執務を終えた私も寝室のベッドで寛いでいると、ルーがやってきた。相変わらず仕事中のようで、書類を差し出される。

「遅くに申し訳ありませんが、これの確認だけお願いします」

「手を見せてくれたら良いですよ」

「は?」

 

 珍しくルーの目が丸くなるが、私は『サイコロなんてしませんから』と手招きする。

 躊躇いながら近付いてきたルーは膝を折ると、片手を見せた。それを手に取ると、自分の手と合わせる。第ニ関節ほども差があることに目を瞠った。

「まあ……大きい」

「当たり前じゃないですか……もういいでしょ」

「あ、待って!」

 

 引っこ抜こうとする手を両手で止めた私は顔を近付けると──掌にキスを落とした。

 小さなリップ音が静かな寝室に響く。

 顔どころか全身が熱く、動悸も激しい。それでも私は懇願した。

 

「い、一緒に……寝てくれませんか?」

 

 いつも以上に小さな声に、本当に届いたか不安になる。

 実際ルーは片眉を上げていて、つい顔を伏せてしまった。

 

「アズフィロラ様達に感化されたのか?」

「え……んっ!?」

 

 溜め息交じりの声と共に手を引っ張られると口付けられる。

 重なった唇は手とも肉球とも違う柔らかさで気持ち良くて熱い。ずっとしていたいのに、ルーはすぐ唇を離すと、私の手に顔を寄せた。

 

「“寝て”よりは“抱いて”の方が俺は好きだ」

「あ……」

「だから言うぞ……抱かせろ」

 

 情欲の目に映る自分。そして、掌に落ちる口付けに自然と頷いた。

 それを合図にベッドへ沈むと、頬や首筋に口付けながら、ルーの手がナイトドレスの中に潜る。擦られているのはショーツなのに、大袈裟なほど跳ねてしまう。

 

「あ……ん、ルー……」

「ああ、手が好きならナマが良いのか」

「まっ、ンンンっ!」

 

 わざとらしい解釈をすると、ショーツをズラした指が秘部へと沈む。

 さっきまで見ていた手がと考えるだけで恥ずかしくなり、きゅっと股を締めた。

 

「何、想像してるんだ……ヴァーカ」

「あ、ああぁ……!」

 

 くすりと笑ったルーは指をさらに沈めると、引っ張りだした乳房に吸い付く。強い吸い付きと掻き回す指の水音が厭らしく響くが、一番厭らしいのは自分の嬌声だった。

 

「はうっ、んんっ……あぁ……ルぅ……もっと」

「何が?」

 

 意地悪く聞き返され、喉に詰まる。

 けれど、伸ばされた手を取ると、掌に口付けた。

 

「ルーの……大きいの……い、入れて欲しい……です」

「……ヴァーカ」

 

 懇願に返ってきたのは口癖。

 けれど、どこか恥ずかしそうな笑みを浮かべ、秘部から指を抜く。それからすぐ片脚を持ち上げると、滾ったモノを挿入された。

 

「あ、ああぁぁ……熱くて……大きンンっ!」

「そういうのは口に出さなくて……いいっ……!」

「ああ、ああぁぁぁあっ!」

 

 突然激しく腰を動かされるばかりか、何度も何度も子宮の奥を突かれ、イってしまう。それはまるで普段言えない愛を伝えているようで、腕を首へと回すとぎゅっと抱きしめた。

 私も精一杯の“愛”を込めて──。

 

 

 

 

「もしかして、ルー。ヒナタ様より愛してるっていうのを伝え「そんなわけないでしょ。バーカバーカ、ヴァーカ」

 

 

 ルーの愛情表現って難しいです────。

  物語 /

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