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小さな黄色い花
白い花
ピンクのデイジー2

小説*2月1日*カナ誕生日

*十一話以降のネタバレ有

 亡き両親と過ごせたのは四年間。
 とても短いけれど、笑顔が素敵で優しかったのを覚えている。特に誕生日には大きなケーキとクマのぬいぐるみが用意され、大好きな笑顔で言ってくれた。


 

「お誕生日おめでとうございます、カナお嬢様」
「……ありがとー……真咲」

 

 ぼんやりしている頭と瞼。けれど、記憶と同じ笑顔に笑顔を返す。
 ベッドに寝転がる私に跨がり、祝ってくれる執事に。そして、手袋越しに頬を撫でられながら口付けが落ちた。

 

 今日は二月一日──私の誕生日。

 


* * *

 


「白鳥嬢」
「はひ、誕生日」
「おっめでと~!」

 

 教室に入ると、安心院くん、荒澤さん、牛島くんにお祝いされる。それを聞いたクラスメイトからも『おめでとー』と、拍手が贈られた。

 

「あ、ありがとうございま……っ!」

 

 ペコペコ頭を下げると腰に痛みが広がる。
 その間に机には飴玉やお菓子が詰まれ、荒澤さんからも少し大きめの紙袋を手渡された。

 

「はひ、プレゼント。私たち三人から」
「ありがとうございます。なんだろ……あ!」

 

 開くと、首元と後ろ頭に赤のリボンを付けたピンク色のクマのぬいぐるみ。
 集めるのが趣味の私にとっては嬉しいが、足に刺繍されたブランド名『Nari bear』に驚く。

 

「これ、有名な専門店のじゃないですか!」
「持ってないクマですか?」
「はい。でもこれ、結構お値段したんじゃ……」

 

 このブランドは手作りの一点ものしかないので値が張るはず。誕生日とはいえ、こんな素敵な物をいただいていいのか戸惑う私に、荒澤さんはなんでもないように頷いた。

 

「はひ、持ってないなら全然OKです。ね?」

 

 笑顔で振り向く彼女に、机に突っ伏していた安心院くんと牛島くんが震えながら親指を立てた。

 

「うん……ちぃが機械音痴だったのを忘れてた俺が悪いんだ……全然OK」
「白鳥嬢が嬉しいなら、しばらくゲーム買えねぇのはいいんだよ……全然OK」
「ぜ、全然OKには見えませんが……」

 

 明らかに顔色が悪いのに、男性陣は笑顔で親指を立てている。
 申し訳なさにまだ戸惑いはあるが、気遣いを無下にも出来ず改めて御礼を言った。すると、荒澤さんが気付いたように問う。

 

「そう言えば、腰を押さえてどうしたんです?」
「あ、もしかして執事にヤられた?」
「ヤ、ヤられたというか……その、まあ」
「朝からラブラブなこって」

 

 察しの良い三人にはバレてしまい、恥ずかしくなる。
 誕生日のせいかおかげか、いつも以上に激しかったので腰が痛いが、優しさと気持ち良さには勝てず、お菓子を片付けながらも頬が緩んでしまった。そんな私に三人は一息つく。

 

「ラブラブなこって」
「いいないいなー。ちぃ、俺らっぐ!」
「白鳥さん。今日は土曜で授業も昼までですし、帰りにアイス食べに行きません?」

 

 牛島くんの顔を手で遮った荒澤さんの誘いに手を止めた私は眉を落とす。

 

「すみません……相模様と昼食の約束をしていまして」
「「「じゃあ、一緒に行く」」」
「え?」

 

 予想外のハモりに目を瞬かせるが、早々に牛島くんが連絡を取ってしまった。私と先方の執事に。

 

 

 


「てめぇら……毎度毎度いい加減にしろよ」
「「「ゴチになりまーす!」」」
「ふざっけんな! 俺は許してねぇぞ!?」
「私と真咲くんは許しましたので、五VS一で慎一様の負けです。諦めてお支払いください。もちろん私たちの分も」
「茉莉花(まりか)ーっ!!!」

 荒澤さん、牛島くん、安心院くんの綺麗な御辞儀に怒り心頭に発する男性は相模不動産のお孫さんで私の婚約者となった相模 慎一様。毎回払わされていることに慌てふためくが、彼の執事である女性。矢内 茉莉花さんに微笑まれる。

 

「誘ったのはこちらですので、どうぞお気になさらないでくださいね」
「御馳走様でした、先輩」

 

 すっと前に出た真咲は、大学の先輩でもある茉莉花さんに一礼する。
 その後ろで黙り込んでしまうのは何度も会って聞いているのに、未だ『真咲くん』と呼ばれているのに慣れないし、嫉妬してしまうからだ。嬉しかった今朝も霞んでしまう。
 心が狭いなと頭を横に振っていると、支払いを終えた相模様が頭を掻きながらやってきた。

 

「あ、相模様。御馳走様でした」
「いや、カナのはいいけどよ……そうだ。ほら、誕生日プレゼント」
「あ、ありがとうございます」

 

 手渡された紙袋には知っているお菓子メーカーの名があり、再度お礼を言う。マフラーを巻いた彼は一息ついた。

 

「アポは大事だけどよ、今度は執事抜きで話をしようぜ。結婚云々になったら巴を連れてもいけねぇしよ」
「……はい」

 

 眼鏡の奥に見える真剣な眼差しに胸が痛む。
 顔を伏せる私の頭を溜め息まじりに撫でた相模様は、荒澤さんたちに揉まれながら車へ向かった。真咲と話していた茉莉花さんも一礼する。

 

「それでは、カナ様。お誕生日おめでとうございます。真咲くんも、またね」
「はい」

 

 真咲よりも小さな声で御礼を言うと一礼する。
 嫉妬しているからといってこの態度は失礼だと頭ではわかっているのに、つい顔を伏せたまま彼のコートを摘まんだ。

 

「また、まんまる大福の嫉妬ですか?」

 

 苦笑と一緒に振り向かれ、摘まんでいた手が離れる。が、身体ごと彼の胸に埋まり、頭を撫でられた。

 

「ただの先輩後輩の間柄と教えたのに、まだ信じてくださらないんですか?」
「そういうわけじゃ……」

 

 口を尖らせると、白い手袋の両手に頬を包まれる。
 ゆっくりと顔を上げられると、今朝も見た大好きな笑顔があった。相模様の時には感じなかった熱が集まり、下腹部が疼く。顔をそらす私に構わず、真咲は首筋に口付けた。

 

「んっ……!」
「大切な誕生日に不満を募らせるのは執事としては見過ごせませんので……取り除いて差し上げますね……隅々まで」

 

 官能的な声に下腹部どころか全身が疼く。
 ゆっくりと顔を戻せば、私だけを映す欲情の目に囚われていた。

 


 

 


 

「あんっ……あっ、ふ、ああぁん」

 

 嬌声と蜜音と楽し気な声が浴室に響き渡る。
 夜にはお祖父(じい)様と叔父様夫婦との食事会。その前にと、帰宅した私はお風呂場で洗われていた。いつものように、執事の手で。

 

「今日は本当にたくさん出ますね。そんなに嫉妬させていたなんて申し訳ありません」
「ああ……待っンン!」

 

 全裸の私を後ろから抱きしめ座る真咲は、濡れるのも構わずYシャツにズボンと、いつもの恰好。さらに白い手袋を嵌めたまま秘部に指を挿し込み、蜜を掻き出している。
 その速度がいつもより速いせいか何度もイってしまい、水滴とは違う蜜が出ていた。

 

「真咲……っん、それ以上激しくはぁああっン!」

 

 制止を掛ける前に、ぐっと奥まで指を沈められ、のけ反る。
 涙目でイった私を抱き留める真咲はくすくす笑いながら首筋や頬を舐め、蜜が付いた両手で乳房を揉み込む。

 

「まだまだ……お嬢様の機嫌は治っていないと、お身体が言っていますよ」
「ひゃうっ!」

 

 両手で胸の先端を引っ張られる。
 それだけでも感じてしまうのに、指先でコリコリ摘ままれたり押し込まれると身体が跳ねてしまう。

 

「やぁ……イジめないでえぇ」
「何をおっしゃいます……お嬢様のお望み通りにしていますよ……っん」
「ひゃっ!」

 

 身体を横にされると、蜜が付いた乳房を搾り上げられ、しゃぶられる。
 卑猥な吸引音と一緒に舌先で先端を転がされ、刺激と気持ち良さにまた新しい蜜が秘部から零れた。その蜜がズボンを濡らすが、気にせず抱きしめられると頬を寄せ合う。
 水滴なのか蜜なのか涎なのかわからないモノを零す唇に構わず口付けた。

 

「んふっ、んっ、んん……」
「んっ……少しだけ機嫌が治ってきましたね」
「ん……まだ少しだけよ」
「左様ですか……んっ」

 

 苦笑も唇で塞ぐ。
 舌先を絡めては唾液も交ぜ、ボタボタと唇から落ちていく。だが、気に留めるどころかもっとと口付けを深くしながら濡れた彼の胸板をシャツ越しに撫で、ズボン越しに勃っていたモノを取り出した。それを両手で捏ねながら口付けを続ける。

 

「ふ、んっ……今夜のお嬢様は……ん、積極的で魅力的ですね……もう、僕のお手伝いも必要ない……っ!」

 

 胸を揉んでいた真咲の両手が止まったのは、肉棒を扱く手を速めたから。息を荒げながら見つめる執事に、私も視線を合わせると口角を上げた。

 

「ダメ……まだムズムズしてるから……ちゃんとお仕事して……真咲」

 

 蜜とは違う白濁が亀頭から散り、両手どころか私の胸や顎を濡らす。
 その両手で彼の肩を握ると腰を上げ、額と額をくっつければ視線が合い、唇も重なった。私のお尻を撫でる真咲は秘部に亀頭を宛がい、白糸で繋がった唇を離すと囁く。

 

「はい……お嬢様のままに」
「──っ!!!」

 

 同時に腰を下ろされ、大きな肉棒を挿入される。
 背中に回った両手に抱きしめられ、私もまた腕を回すと、激しく上下に揺らされた。

 

「あっ、あああぁあ、ああんっ!」
「ああ……本当に今夜のお嬢様は……っ積極的で魅力的で……我儘だ……!」
「ふあああぁああンンっ!」

 

 ぐぐっと根本まで挿入され達する。
 だが、よろける身体を支えた真咲は頬に口付けながらもまだ腰を揺らし、奥をゴツゴツ突いた。

 

「ああぁあ……そこはダメえぇ」
「ええ……知ってます……!」
「ああ、ああぁ……ンンっ!」

 

 また頭の中が真っ白になると、引っこ抜かれた肉棒から白濁が飛び出す。
 だが、間を置かず、反転されると浴槽の縁に両手を置かされた。肩で息をしながら見れば、シャツボタンもすべて外した真咲が滅多に見せない本物の肌を開く。
 それだけで目を奪われるが、すぐ腰を持ち上げられ、蜜を零す秘部に肉棒を宛てがわれた。

 

「あっ、待って……まだイったばかり」
「ダメです……早くムズムズを取り除かないと食事会に間に合いませんからね」

 

 私の言うことを聞いてこその執事ではないのか。
 そんな疑問は秘部に挿し込まれる肉棒の大きさと熱さで消える。仕事以上に彼が私同様、我慢できないのだと。ぎゅっと縁を握ると、息を切らしながら振り向く。

 

「っあ……真咲……早く挿入(いれ)て」

 気付けば自分からお尻を突き上げ、ねだっていた。
 一瞬だが真咲の目は見開かれ、浴室のせいかわからない熱が頬に集まると口角が上がる。そしてすぐ、待ち望むモノが挿入された。

 

 前からとは違う刺激に達するのは早いが、まだまだと言うように真咲は抜くことなく奥を突いた。嫉妬も背徳も掻き消すどころか私を悦ばせるのがプレゼントだと言うように、声も蜜もすべて出させ、快楽へと導く。

 

 執事としてとは思えない熱も一緒に──。


 

 

 

「疲れて寝たと言ったら、敬三が寂しがっておったぞ」
「ああっ叔父様! 本当にごめんなさいごめんなさいっ!!」
「お手紙ご用意しますね」

 

 腰と睡魔についても考えてもらえるよう、執事にお願いしよう────。

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