異世界を駆ける
姉御
番外編*拍手小話~a+お正月編~
*過去の拍手お礼SS集(まだ10話辺りの話)
(可愛い猫イラスト(*実際の画像は掲載不可のため文字のみ)
*陽菜多*
うむ、拍手感謝する。
何やらわけのわからないところに墜ちてしまったが、私はその拍手を励みに生きてみせよう!
出来れば後ろ画像のような可愛いものとか年下がいれば……な、なんでもない。
--------ー--------------------------
*アーポアク国~大晦日編~*
朝から私は宰相室の──大掃除をしていた。
三角巾と割烹着で走り回っては情報部隊(主に年上)に手伝ってもらうが、のほほん男は邪魔なのでソファと一緒に端っこへ。
「ヒーちゃ~ん~今日は~なんなの~~」
「うるさい! 今日は大晦日だぞ!? 一年一緒に頑張った部屋を掃除せずどうする!!!」
「いや~ヒーちゃん~今月きたばかりで~世話にっだ!!!」
ハリセンで沈めると、年下部下が書類分けを終えたのを見て頭を撫でる。
そんな年下に癒されながら床が綺麗に見えるまで片付いた部屋に満足するが、これで終わりではない。振り向くと、ソファに正座して判子を押している宰相に言った。
「おい、『四聖宝』を呼んでくれ」
「え?」
判子の手を止められたが、構わず『重要の方でな』と言うと、ポールで一階へ向かう。宰相は聞いてくれたのか、案の定最初に現れたのは赤髪。その額からは汗が流れ、急いでやって来たのがわかる。
「いったい何が「ほいっ」
雑巾を渡す。眉間に皺を寄せたまま睨まれると、他の三人もやってきたので各自に手渡した。
「んだよ……これ」
「見てわからんか、掃除だ掃除」
「掃除って、どこをされるんです?」
「『四宝の扉』含んだ一階全部に決まっているだろ」
「「「「え!?」」」」
四人はたいそう驚いた様子で目を見開くが、勢いよくハリセンで背中を叩いた。
「当然だろ! 普段この階の使用回数の多さは貴様らなのだから!!」
「んなの『通行宝』使ってるヤツが少ねぇんだから当たり前っが!!!」
ハリセンで空高く飛んだハチマキ男。
三人も彼を目で追い『ドベシャッ!』と音が響くと私を見る。許せハチマキ男。私は貴様も大好きだが大事なものは譲れん。振り向くと、微かだが三人の肩が揺れた気がしたが、ニッコリ微笑む。
「よーし。まずは銀髪の風魔法で落とた埃を赤髪の火魔法で焼き尽くし、少年の水魔法で床を濡らし、罰としてハチマキ男は一人で雑巾掛け。そして各自、扉の掃除だ」
「キミ今、焼き尽くすとか物騒なことを言わなかったか?」
「アズ様……お姉さんに逆らっちゃ……ダーメですよ……」
「ここは素直に頑張りましょうかね」
三人は渋々はじめたが、ハチマキ男は帰ろうとする。が、私はどの扉にも入れるため、どこまでも追い駆けてやった。
時刻は夜の十一時を過ぎ、のほほん男とエレベーターで一階へ降りる。
扉が開き露になったのは、見間違えるほど綺麗になったホール。と、ぐったり倒れ込んだ四人。だらしない。
「てんめぇ……人使い荒いんだよ……」
「まさか壁と階段の掃除までさせられるとは思いませんでした……」
「『浮炎歩』をこのようなことに使われるとは……」
「もう……魔力ない……」
文句を言いながらも、なんだかんだで隅々までしてくれるとは良いヤツらだ、うむ。
のほほん男に持たせていた折畳み机を置くと、お盆に乗せた丼鉢を四人の前に置いていく。それは年越し蕎麦。少年の目がキラキラしていて、とても可愛い。
「これ……お姉さんが?」
「うむ。調理場の人達に手伝ってもらってな」
魔力のない私には致命的だが、リディカやコック達が協力してくれて助かった。というより、この国にも蕎麦があるのがビックリだ。のほほん男の前にも置くと五人は箸を取り、手を合わせる。
「美味しそうですね」
「毎年~忘れて~しないからね~~」
「けっ! 働いた分、食ってやるかんな!」
「いただく」
「いただき……ます」
食べだす中、私は蕎麦をもう一杯持つと裏の階段に置いた。上に向かって小声を響かせる。
「イズー、置いとくからなー」
そう言い残し五人の所へ戻る。
次に見た時には蕎麦は消え、怪奇現象のようだがと苦笑しながら席に着いた私も蕎麦を啜った。まさか異世界で年を越すとは思わなかったが、美味しそうに食べる皆の姿に頬が緩む。
うむ、来年もよろしくな────。
--------ー--------------------------
*アーポアク国~お正月編~*
アーポアク国でも年が明けた。
この国でも年越しはあるようだが、ただの『おめでとう』で終わるらしい。
「ヒーちゃ~ん~今日は~何~~」
「てっめぇな! 昨日といいなんなんだよ!!」
大晦日に続き、一月一日の元旦にも『四聖宝』を“重要”で呼び出した私。
昨日の疲れが残っているのか全員どこかぐったりだ。そして赤髪の苛立ち度が増しているのがわかる。頑張って一番乗りせんでもいいだろうにと考えていたら両頬を引っ張られた。
「職権乱用はやめてくれないかっ!?」
「ひょんだのはにょひょひょんおふぉこだ~!」
「それで今日はなんでしょうか?」
銀髪の声で赤髪の手が離れると、私は全員を横一列に並ばせる。おい、なんで全員背中を護っているんだ?
溜め息をつくと、床に正座した私はお辞儀する。
「新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します」
全員が固まり、私を凝視する。
なんだと首を傾げていると、少年が小さく『えーと……』と口を開いた。
「わざわざ……それを言うために……?」
「おいっ! そんなのでイチイチ呼ぶんじゃねーよ!!」
「バカを言うな! 新年の挨拶は大事なのだぞ!! それにこれで終わるわけがなかろう!!!」
「あ、やっぱり何かあるんですね」
全員が後退りした。失礼なヤツらだ。
そこで私は“あるモノ”を持って来る。途中イズに会えたおかげでエレベーターで運ぶことが出来た物。胸もみもみと代償はついたが、赤髪が察した。
「臼と杵……まさか!?」
「うむ、今日は餅つきだ!!!」
瞬間、のほほん男以外が四散したが、扉に入っても空中を飛ばれても捕まえてやった。
ふっ、異世界チート便利ではないか。
「ボク……餅つきしたことない……です」
「ああ、私もしたことないですね」
「む、そうなのか? よーし、赤髪は杵を持ってハチマキ男はぬるま湯につけ」
そして私も杵を持つが、なぜかハチマキ男が絶句した。
「ちょ、待て! てめーが杵すんのか!?」
「うむ、間違って叩いても安全なヤツがいいだろ?」
「ニッコリと怖いこと言ってんじゃねーよ! アズフィロラ代わ……うおおいっ!! マント脱いでヤル気満々じゃねーか!!!」
本当は年上ののほほん男か銀髪にしたかったが、のほほん男は蒸した餅を持って来ると言っていないし、銀髪はできんし……ここは頑丈そうなハチマキ男がいいだろ。うむ、安心しろ。搗(つ)いた餅は多くやるから持って帰ると良い。
そんなハチマキ男の絶叫が響く中、餅つき大会が開催された。
餅は各騎士団にお持ち帰りされたが、後に『四宝の扉』近くや城内では『新年の城に響く地獄声』と呼ばれる噂が立った──なんだそれ?
まあ、今年もよろしくな!!!