カモん!
番外編09*「私の誕生日」
八月三十一日。日曜日。
0時を過ぎ、隣には既にお休み中の羽実ちゃん。私も欠伸をしていると海雲さんが入ってきた。
「あ、海雲さ~ん、もう寝「みき、誕生日おめでとう」
沈黙。考える。カレンダー確認。ポクポク。チーン。笑顔で頭を下げた。
「ありがとうございます!」
「…………間違えたかと思ったぞ」
冷や汗を流していた海雲さんは溜め息を吐く。
それからベッドに座ると私の頭を撫でた。普通に明日から九月だなーとしか思ってなかったです。すみません。
「私もついに三十代ですか」
「何も………………変わらないな」
あれ、妙に間が長い気がしましたね。
海雲さんも何も変わらずカッコイイですよと笑みを向けていると、一瞬頬を赤くした。すると、伸びた手が私の後頭部を押さえ、笑みを浮かべた顔が近付く。同時に囁かれる。
「おめでとう……みき」
「あ、ありがとうござんっ!」
天然100%の笑みに顔が真っ赤になる。
でも返事は唇へと吸い込まれ、甘い甘い口付けに喘ぎを漏らすと押し倒された──が、羽実ちゃんが横でモゾモゾ動いてしまったので、口付けとキスマークだけが付けられる。
今日は私の誕生日──そして。
* * *
「まきたん、ハッピーバースデー!」
「まきちゃん、バースデ~!」
翌朝、羽実ちゃんと元気にお隣の『寺置家』のインターホンを鳴らし、ドアが開くと同時にお祝いの言葉を述べた。けど、出てきたのは息子の紫苑くんだけ。
「……すみません。母さんは腰が痛くて動けないそうです」
「え、もうヤられたの?」
目をパチクリさせる私に子供達は首を傾げる。
まだまだみんなには早いお話しなので何も言いませんよ。それにしても海雲さんは我慢してくれましたが、お秘書さんはダメでしたか。さすがです。
その分、リビングソファに俯けで倒れ込んだ妹の背景には血の色で『死』の文字がみえた。
「まきたん、誕生日なのに死亡フラグ立ってるよ」
「折るか……止め刺して……姉さん」
「まきちゃ~ん、へとへと~」
顔を青褪めるまきには悪いですが、私と羽実ちゃんはニコニコ。苛立っている様子に構わず、ピンクの袋を差し出した。
「お誕生日おめでとう、まき」
「おめでとう、みき」
腰を支えながら起き上がったまきからも、青の袋を渡されプレゼント交換。
今日は私の誕生日であると同時に、まきの誕生日。毎年恒例です。その隣で紫苑くんがコーヒー牛乳を持って来ると、羽実ちゃんが辺りを見回した。
「まもちゃんとりまちゃんは?」
「母さんのプレゼントを取りに行くとかで出かけてます。海雲おにい様は家ですか?」
「うん、お仕事の電話してた」
今年は日曜日ですからね。
そう言えば去年は平日で二人して仕事を休み、海雲さんがボヤいていたことを思い出す。
「なんか、八月三十一日は定休日にしようか悩んでたよ」
「揃ってバカなの?」
もぐもぐとプリッタを食べながらツッコミを入れたまきは『マジでしたら倒産するぞ』など笑えない話をする。でも本当にそうなったら……今の私は働いてないので大変そうだ。やっぱりまたバイトかパートしようかな。
「意地でも海雲お義兄さんはさせないと思うけど」
「あ、やっぱり? 海雲さん嫌がるんだよね」
「まあ、紫苑や羽実ちゃんも来年には小学校だし、昼間ならいいんじゃない?」
「なるほど~……聞いてみる!」
「パパ許してくれるかプリッタかける?」
「ぼく、ダメな方で」
プリッタを互いに合わせる子供達。あれれ、羽実ちゃん、紫苑くん何してるのかな?
しかも羽実ちゃんまで『ダメにかけたい~』と言う始末。私がいけなんでしょうか……確かに仕事しようかなーと話すだけで海雲さんの俺様部分が見える気がしますが。
「ちゃだいま~」
顔を青くしていると、玄関が開く音と可愛い声。
そのあと、お秘書さんの『走らない』の声が聞こえると、私達似の天パの髪をツインテにした娘の“りま”ちゃんと、旦那のお秘書さんが入って来た。
「マんマ~あ、みちちん、うみちん!」
「おや、みっちゃん様。お誕生日おめでとうございます。これプレゼントです」
「わー、ありがとうございます! 後ろのはまきたんのですか?」
「ええ、愛の差が違うのは当然なので勘弁してくださいね」
今日も変わらず爽やか笑顔のお秘書さんから手の平サイズの箱を貰う。
そんな彼の後ろには縦一メートル、横五十センチほどのダンボール。多分まきへのプレゼントだろうなーと私も微笑みながら羽実ちゃんと寺置家を後にした。
家に戻ると電話を終えた海雲さんがリビングソファに座って新聞を読んでいた。でも、私達が入ってくると閉じ、駆け寄った羽実ちゃんはジャンプして抱きつく。
「パパー! ママが働いたら怒るよね!?」
「………………は?」
「うううう羽実ちゃん! ケーキ食べましょうか!! パパが美味しいの買ってきてくれてますから!!!」
早速回答を求める娘と旦那様の視線に、慌てて冷蔵庫からケーキを取り出す。
海雲さんが今朝、生チョコケーキを買ってきてくれたんですよ。私は先にいただきましたが羽実ちゃんはまだ寝てた……はずなのに、三キレほどなくなっている。あれ?
「うみ~食べたよ~」
「ええっ、いつの間に!?」
「みきが……部屋で義妹のプレゼントを包んでる時にな」
片方笑顔、片方クール顔で頷かれ私も『そうですか』と頷くしか出来ない。
すると海雲さんが手の平サイズの包みに気付いたので、お秘書さんからだと言うと眉を上げた。あ、ちなみに海雲さんからは色鉛筆100色セットを貰いましたよ! 絵を描くのが好きな私にはとても嬉しいです!!
「あいつ……また変な物じゃないだろうな」
「変な……ああ、いつかの海雲さんの誕生日みたいな猫耳ですか?」
「ねこ……にゃ~にゃ「羽実、下に瑞希さんが来たらしいから行って来い」
羽実ちゃんが猫のモノマネをしたが海雲さんに遮られた。と言うより、お母さん?
何も聞いてない私とは反対に羽実ちゃんはバックを持って来ると『いってきまーす!』と元気良く飛び出し、私も『いってらっしゃーい』と見送る。
海雲さんを見ると、お秘書さんから貰ったプレゼントを開けていた。その表情は無心。隣に座るとピンクのファーがついた──手錠。
「羽実ちゃんとお巡りさんごっこですかね? あ、でもどこかに……どこ行ったんですか?」
「ドライブ……紫苑とりまも一緒に。夜まで預かるから妻と遊べって瑞希さんに言われてな」
「そうでしたか。じゃあ、私達もどっかにんっ!」
顔を上げると、すぐ目の前に海雲さんの顔がある。と、思った時には口付けられていた。“おめでとう”の言葉を受け取った後よりも荒い口付けに離れようとするが、背中に回った腕に捕まる。そのまま押し倒されても口内の奥を舌が突いた。
「ああっ、んっ……海雲さ……んんっ」
「ん、また……働く話……してたのか?」
「ダメ「だ」
ああっ、即答。目がとても鋭い。これは怒ってる。紫苑くんにプリッタあげなきゃ。
見事に負けた私がそんなことを思っていたのが悪かったのか、眉を上げた海雲さんの手が私の両手を捕えると、頭上でお秘書さんから貰った手錠で繋がれた。ええっ!!?
「わわわ私っ、犯罪者ですか!?」
「………旦那の話を聞かない罪でな」
「そそそんああっ!」
耳元で聞こえてた声が下がると首筋を強く吸われる。
同時に上着の下に潜った手がブラをずらし、指先で胸の先端を押されると大きく身体が跳ねた。捕われた腕が“ガチャ!”と音を立てる。両腕を下ろそうとするも片手で押さえ込まれ、さらに先端を摘んでは押される刺激に声を上げた。
「ひゃっ、あっ……んあっ、やめ……ああっ!」
でも聞き入れてはもらえず、上着を捲られると先端に吸いつかれる。
それも歯で噛んでは小さな歯列の隙間から舌を出し“チロチロ”舐めるという痛さ。けれどゾクゾクする身体は止まらない。ガチャガチャの音も。
「ん……その音は嫌がってるのか? それとも気持ち良いのか……みき?」
「ひゃう、ああ……わ、わから……な、あんんっ」
涙目になっていると先端から離れた口が私の唇を覆い“ちゅくちゅく”水音を立てながら唾液が奥へと流れていく。口付けが離れると上体を起こされるが、腕は後ろ手のまま彼の胸板に背を預け、膝に座らされた。羞恥に顔を赤めた私は必死に口を開く。
「か、海雲さ……ん、手錠……はずぅうああっ!」
「まだ……ダメだ」
笑みを浮かべているであろう海雲さんは、後ろから首筋やうなじを舐めながら両手で乳房を揉んでは先端を引っ張る。下腹部には膨らんだ彼のアレが当たり、愛液が零れているのがわかった。
それは羞恥のせいなのか刺激のせいなのかわからない。でも全身が一気に熱くなり、思考が乱れる。
「みき……熱そうだな……ん、脱ぐか?」
「ふああっ……いっ……」
嬌声を『はい』と捉えたのか、手錠から腕が解放されると同時に上着もブラも下の服も脱がされる。自由な腕に喜ぶことはなく、火照った身体はただ彼の胸板に背を預けるだけ。が、今度は両足に錠をかけられた。
「ええっ!!?」
驚きのあまり乱れていた思考が戻ってくると、海雲さんは笑いながら上着を脱ぎ、片手をショーツの中へと潜らせる。既に愛液でショーツは濡れていて頬を赤く染めた。
そんな私の頬に口付けた海雲さんは迷う事無く指を膣内に入れる。一本、二本、三本と音を鳴らしながら。
「ああっ、あ……ああっ!」
大きすぎる刺激に脚を開こうとするが、やはり捕われた足では満足に開くことは出来ず“ガチャガチャ”“じゅぶじゅぶ”と、音が交わる。
「そんなに乱れて……奥さんは何が欲しいんだ?」
「ほ……しい……あああっっ!」
指で膣内を掻き回されると思考まで回りだす。
ぐちゃぐちゃに乱れ、息を荒げた私は何が欲しいのかもわからない。すると、両脚が浮き、すぐに下ろされるが、先ほどまでなかった尖った先端らしきモノがショーツ越しに刺さる。
「ひゃあっ!」
「っ……感じすぎだ」
捕まっていた足を忘れ、無理に開こうとしたせいか、身体が一瞬浮くと勢いよくまたショーツ越しに先端が刺さった。同時に呻きが後ろから聞こえたが私ももうダメ。
「海雲さ……ん……ナカ……挿れっああ!」
ショーツ越しに先端をグリグリ秘部辺りで回され、ナマとは違う刺激が駆け上る。それでも顔を横に向け、愛しい人と目が合うと口付けをくれた。
「そうだな……苛めるのはこのぐらいにして……挿れるか」
「海……雲さ」
「足のは外さないまま」
ほっと安堵の表情を浮かべたが、彼の言葉に目が点。
そんな私の表情に笑う彼はショーツを膝下まで下ろすが足の錠は外さない。そしてそのまま、濡れた膣内へと挿入した。
「ひゃああああーーーーンンっっ!!!」
“ガチャッガチャ”と煩い音に負けない声が上がっても構わず揺さぶり、さらに声を上げさせる。解放されているとされていない時とでは刺激が違いすぎて絶頂がやってくるのも早かった。
「イけ………みき」
いつもの優しい声と共に我慢も何もなく果て、彼の胸板に落ちる。
先ほど以上の声を響かせた私は心底羽実ちゃんがいなくて良かったと思うが、羞恥しか残りはしない。やっと解放されても今度は普通に挿入を繰り返され何度イったかもわからなかった。
海雲さん、今年の誕生日プレゼント激しすぎます……。
* * *
「じゃあプリッタ、しーちゃんに渡してきま~す」
「よろしくです~~……」
見事に翌朝筋肉痛となり動けない私は、優勝賞品を羽実ちゃんに届けさせる。と、海雲さんが呼び止めた。
「羽実、これを寺置に返しておけ」
「……てじょう?」
「やるんなら自分の妻にし「かかかか海雲さん! ごめんなさい!! もう働くって言わないから許してくださーーーいっっ!!!」
私の泣き叫ぶ声に海雲さんは羽実ちゃんから手錠を取り上げると私の頭を撫でる。旦那様が日に日に俺様になるのは私のせいなのかなんなのか……五年目で何かが変わりはじめたようです。ともかく。
お秘書さんに文句を言おう────。